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本やゲームの感想など

「怖い感じ」とは何か:『恐怖の哲学―ホラーで人間を読む』

「ホラー作品はなぜ娯楽として成立しているのか」など恐怖を主題とはしているが、それはあくまで具体例。 そもそも「感じ」や「情動」とは何で、どういう役割を果たしているのか、というもっと広い疑問を、生物学、脳科学を採り上げて解説していたため、ホラ…

小説感想:『ダンガンロンパ霧切 3・4』

密室十二宮編。まさか 3, 4巻でも終わらず 5巻に続くとは。 3巻 トリックの机上の空論っぽさがダントツ。いや、本当に上手くいくのかもしれないけれど、手間とリスクが大きすぎるというか、もっとシンプルでいいよねっていう。まぁキャラ物小説だからその辺…

EQ:『Emotional Intelligence』

Google発のマインドフルネス解説書として有名な『サーチ・インサイド・ユアセルフ』の参考文献の筆頭に挙げられている本。 Emotional Intelligence: 10th Anniversary Edition; Why It Can Matter More Than IQ作者: Daniel Goleman出版社/メーカー: Bantam…

余裕は贅沢ではなく必需品:『いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学』

時間や金銭に余裕がないという状況は、それ自体が認知能力を低下させて状況をより悪化させかねないということを様々な実験を通して明らかにし、余裕(=スラック)を持つことの大切さを解く本。 いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学 (ハヤカワ・…

微生物も積もれば巨人となる:『見えない巨人―微生物』

微生物に関してはほとんど何も知らず、せいぜい細菌のイメージが先行してなんとなく良い印象は持っていないという程度だったのですが、本書で微生物の多様性と有用性を窺うことができました。まさに「知らなかったことを知る」ことができて大変満足です。 本…

小説感想:『戦場のコックたち』

青春ミステリという紹介をみましたが、青春という言葉から連想するような爽やかさからは遠く、ミステリ要素もあくまで(良い)味付けで、全体としては「戦争もの」。 戦争の描写はしっかりと厳しく、コックとして戦争に参加した主人公もいつの間にか戦闘に慣…

皮膚がふやける理由:『触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか』

触覚に関する身近な様々な疑問に対して、今までに解明されている脳や神経といった解剖学的な仕組みから科学的に説明していて、読みやすく面白かったです。 触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか作者: デイヴィッド・J.リンデン,David J. Linden,…

「気づいた時」には脳で何が起こるのか:『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』

被験者の自己申告による「気付き」に焦点を当てて科学を遂行するという試みが、単純でありながらなるほどと思えて面白かったです。 無意識と意識の違いに焦点を当て、錯視や認識できるかできないかの境目となるような情報の提示方法を利用し、同じ刺激に対し…

遺伝子の協力と裏切り:『遺伝子の社会』

遺伝子が後世に伝わり進化や変異が生まれる様子を、遺伝子の集まり(ゲノム)を社会、個々の(対立)遺伝子をその構成員とみなして解説した本。 読み物としてはちょっと堅い感じで、説明される個々の例には専門的な用語も多いですが、遺伝子の集まりを社会と…

砂糖・塩・脂肪:『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』

とても素晴らしいビジネスドキュメンタリー本でした。副次的な作用として、間食の予防、ダイエットにも役立ちそうです。 煽動的なタイトルとは裏腹に*1、常識的な消費者の視点で加工食品業者が行っている商品戦略、マーケティング戦略の裏側、負の影響を徹底…

SIY:『サーチ・インサイド・ユアセルフ』

瞑想関係の記事を見るたびに「信頼の置けそうな研究結果も出てるみたいだしやってみようかな、でも何だか胡散臭いしなー。」と思い続けて1年以上が経過していたものの、最近精神的に辛く感じる機会も少なくないし今年は少し実践してみるか、ということで Goo…

テクノロジーが注意を奪う:『神経ハイジャック ― もしも「注意力」が奪われたら』

2006年に携帯電話を操作しながらの「ながら運転」が原因で起きた交通事故を、関係者のバックグラウンドを詳細に調べてドキュメンタリー風の物語として進めながら、テクノロジーが浮き彫りにする注意力の限界やそれがもたらす社会への影響についてまとめ上げ…

言葉と思考:『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』

言語が思考に与える影響について、数々の説が主張され、そして否定される歴史を辿りながら、最近の研究成果を挙げて現在の知見をまとめている、科学系の読み物としてとても面白い本でした。 「年間ベストブックを多数受賞」だそうですが、納得です。 言語が…

小説感想:『紙の動物園』

とても良い短編集でした。 全体的に感傷的な文章なのですが、短編集にありがちな「ちょっといい話」ともまた違う、不思議な感じな物語が多かったです。 特にお気に入りの作品は「紙の動物園」、「もののあはれ」、「良い狩りを」。それ以外の作品もハズレは…

ゲーム感想:『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』

1/16 : ところどころ加筆修正。 ※ ネタバレ超注意!本編に関する重大なネタバレを含みます。クリア前の方は読まないことを強くお勧めします。 とりあえず本編クリアしたので殴り書きです。 いろいろ伏線の見落としや考察の不足があると思いますが、ご容赦下…

小説感想:『巨人たちの星』

『星を継ぐもの』、『ガニメデの優しい巨人』の続編である『巨人たちの星』を読みました。 巨人たちの星 (創元SF文庫)作者: ジェイムズ・P・ホーガン出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/12/12メディア: Kindle版この商品を含むブログ (4件) を見る …

小説感想:『ガニメデの優しい巨人』

お気に入りの SF小説の1つの『星を継ぐもの』の続編、『ガニメデの優しい巨人』を読みました。 ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)作者: ジェイムズ・P・ホーガン出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2014/12/12メディア: Kindle版この商品を含むブログ (…

小説感想:『高い城の男』

第二次世界大戦でドイツや日本を筆頭とした枢軸国が勝利し、その後の社会を支配しているという仮想世界を描いた小説、『高い城の男』を読みました。 高い城の男作者: フィリップ・K・ディック出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/11/30メディア: Kindle版…

漫画感想:『ベルサイユのばら』

『第3のギデオン』を読んでいたところ姉が勧めてくれた『ベルサイユのばら』を読みました。 ベルサイユのばら 文庫版 コミック 全5巻完結セット (化粧ケース入り) (集英社文庫―コミック版)作者: 池田理代子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/07/21メディ…

死にゆく中で生の意味と希望を探す:『When Breath Becomes Air』

多くのサイトで 2016年のベスト本の1つとして紹介されていた『When Breath Becomes Air』を読了しました。 When Breath Becomes Air作者: Paul Kalanithi出版社/メーカー: Random House発売日: 2016/01/12メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 脳神…

ゲーム感想:『Her Story』

過去の事件のインタビュー映像のデータベースを、適切なワードを考えて検索、閲覧していくことで謎を解き明かすゲーム、『Her Story』をプレイしました。 store.steampowered.com 検索結果に対して閲覧できる映像は最大で5つまでで、一般的すぎる言葉(I や …

ゲーム感想:『MOMODORA -月下のレクイエム-』

ノーマル1周目のクリア時間は攻略サイトなしで6時間程、快適に楽しめました。 良かったところ 全体的な操作性 良作2Dアクションゲームと評価されているだけあって操作系は全体的に快適でした。 ジャンプ中を含めて移動時の変な慣性がなく、緊急回避アクショ…

ゲーム感想:『Undertale』

※ ネタバレ注意 ネット上で一種のカルト的な人気があるゲーム。気になっていたのでプレイしました。 Steam 上で「圧倒的に好評」なのは「こういうゲームが好きな人がプレイしている」ということに起因する部分も多いとは思いますが、それでも「こういうゲー…

ニューダンガンロンパV3 体験版をプレイして:期待と生存予想・クロ予想

いつの間にか発売日まで後20日を切っています。 体験版自体は「え、これで終わり?」という感じで少し消化不良気味ですが、本編には大いに期待してます。 本編クリアした後に「プレイする前はこんなことを思っていたんだなー」ということを懐かしむために、…

ゲーム感想:『ざくざくアクターズ』 - 傑作群像RPG

終わってみてのまず一番の感想は「これぞフリーゲーム」。「フリーゲームとは思えないクオリティの高さ」という方向性ではなく(クオリティが低いわけではもちろんないです)「フリーゲームならではの熱量の大きさ」が凄まじく、よく作り込まれていて、作者…

小説感想:『本泥棒』

わたしは言葉を憎み、言葉を愛してきた。 その言葉を正しく使えていればいいのだけれど。 第二次世界大戦下のドイツにおいて、ヒトラー総統が言葉によってもたらしたユダヤ人迫害や戦争に翻弄されながら、言葉によって救われた女の子の物語。 戦争中の街が舞…

小説感想:『Never Let Me Go』

少し暗い道をゆったり歩くような独特の雰囲気の小説で、大きな事件やどんでん返しという仕掛けがないにも関わらず最後まで退屈することはありませんでした。 主人公が過去の思い出を語る形で話が進んでいきますが、ところどころ「どういう意味だろう?」と引…

人工知能の人権 > 人間の人権?:『シンギュラリティ:人工知能から超知能へ』

満足度:★★★☆☆ シンギュラリティ:人工知能から超知能へ作者: マレー・シャナハン,ドミニク・チェン,ヨーズン・チェン,パトリック・チェン出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2016/01/29メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) …

脳の理解への道のりは遠い:『コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』

満足度:★★★☆☆ 『脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』というタイトルから「いま現在わかっている、コネクトーム(脳の配線)と脳の高次機能(記憶、学習など)の関係について解説する」という内容を期待していたのですが、実際に読んでみると…

道徳が嫌いな方に:『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』

満足度:★★★★★ 私は小学校のころは道徳の授業が嫌いでした。 …ということは特にない(*1)のですが、「道徳」と聞くとちょっと身構えてしまいますね。胡散臭いというか、宗教感があるというか、思想統制のにおいがするというか。 社会はなぜ左と右にわかれる…