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本やゲームの感想など

科学

プラシーボだっていいじゃない:『「病は気から」を科学する』

「病は気から」を科学する作者: ジョー・マーチャント出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/04/13メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る ポイント プラシーボであっても治療効果・鎮痛効果があるのであればそれは有用で、利用価値がある。 プラシー…

微生物との共存:『10% Human: How Your Body's Microbes Hold the Key to Health and Happiness』

微生物、とくに人の腸に棲みついている微生物が人の健康にいかに与えるかについて、肥満や花粉症、アレルギーといった身近なものから自閉症などの精神的な病気までをも絡めて、多くの研究を引用している紹介した本。 『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態…

人類あるいは全ての生物の起源:『生命、エネルギー、進化』

生命・細胞がどこで、どのようなプロセスで発生したのか、という命の起源の問題に対する答えから始まり、その説を元にすれば有性生殖はなぜ生み出されたのか、老化と死はなぜ避けられないのか、という現代の生物が持つ特徴を導き出せる、ということを示す。…

思い出しライトは作れるか:『脳はなぜ都合よく記憶するのか』

ありもしなかったことの記憶が創作され確信される仕組み、被験者に偽の記憶を植え付ける方法などを提示しながら、記憶を事実として信用すべきでない理由を明らかにしている。 その根底にあるのは「記憶は(記憶されたその瞬間から)完全ではない」という単純…

ゲーム AI の現在と未来:『人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか』

身体を持つキャラクターが自身を動かし世界とインタラクションするための AI、チーム・群衆をコントロールする AI など、画像認識や音声認識といった狭い範囲での AI の例に留まらず、ゲーム内世界の実現や人間的なロボットに必要な幅広い範囲のトピックを扱…

微生物も積もれば巨人となる:『見えない巨人―微生物』

微生物に関してはほとんど何も知らず、せいぜい細菌のイメージが先行してなんとなく良い印象は持っていないという程度だったのですが、本書で微生物の多様性と有用性を窺うことができました。まさに「知らなかったことを知る」ことができて大変満足です。 本…

皮膚がふやける理由:『触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか』

触覚に関する身近な様々な疑問に対して、今までに解明されている脳や神経といった解剖学的な仕組みから科学的に説明していて、読みやすく面白かったです。 触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか作者: デイヴィッド・J.リンデン,David J. Linden,…

「気づいた時」には脳で何が起こるのか:『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』

被験者の自己申告による「気付き」に焦点を当てて科学を遂行するという試みが、単純でありながらなるほどと思えて面白かったです。 無意識と意識の違いに焦点を当て、錯視や認識できるかできないかの境目となるような情報の提示方法を利用し、同じ刺激に対し…

遺伝子の協力と裏切り:『遺伝子の社会』

遺伝子が後世に伝わり進化や変異が生まれる様子を、遺伝子の集まり(ゲノム)を社会、個々の(対立)遺伝子をその構成員とみなして解説した本。 読み物としてはちょっと堅い感じで、説明される個々の例には専門的な用語も多いですが、遺伝子の集まりを社会と…

テクノロジーが注意を奪う:『神経ハイジャック ― もしも「注意力」が奪われたら』

2006年に携帯電話を操作しながらの「ながら運転」が原因で起きた交通事故を、関係者のバックグラウンドを詳細に調べてドキュメンタリー風の物語として進めながら、テクノロジーが浮き彫りにする注意力の限界やそれがもたらす社会への影響についてまとめ上げ…

言葉と思考:『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』

言語が思考に与える影響について、数々の説が主張され、そして否定される歴史を辿りながら、最近の研究成果を挙げて現在の知見をまとめている、科学系の読み物としてとても面白い本でした。 「年間ベストブックを多数受賞」だそうですが、納得です。 言語が…

人工知能の人権 > 人間の人権?:『シンギュラリティ:人工知能から超知能へ』

満足度:★★★☆☆ シンギュラリティ:人工知能から超知能へ作者: マレー・シャナハン,ドミニク・チェン,ヨーズン・チェン,パトリック・チェン出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2016/01/29メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (5件) …

脳の理解への道のりは遠い:『コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』

満足度:★★★☆☆ 『脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか』というタイトルから「いま現在わかっている、コネクトーム(脳の配線)と脳の高次機能(記憶、学習など)の関係について解説する」という内容を期待していたのですが、実際に読んでみると…

モノとして認識される人:『Dehumanizing the Lowest of the Low』

直訳すると『下の下の非人間化』、意訳すると『最低な人は人であらず』といったところでしょうか。 何かの本(たしか『〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義』)で紹介されていて、気になっていた論文を読んでみた内容のメモです。 興味を持った…

実は身近な量子の世界 :『量子力学で生命の謎を解く』

原題は『Life on the Edge』というのですが、カッコいいタイトルですね!私たち生命は古典物理学と量子力学との堺を跨いで維持されている、という主題にも合っていてとてもクールです。 (邦題のシンプルなわかりやすさも、これはこれでとても好印象です。)…

キメラ動物と臓器工場の是非:『生命の未来を変えた男 山中伸弥・iPS細胞革命』

今回取り上げる本は『生命の未来を変えた男 山中伸弥・iPS細胞革命』です。 山中伸弥教授の伝記のように感じるタイトルではありますが、内容の主題はむしろ『iPS細胞革命』で、iPS細胞の研究を中心とした医療技術革新がもたらす未来の医療の可能性とそれに伴…

最多の細胞いえますか?:『人体 ミクロの大冒険 60兆の細胞が紡ぐ人生』

今回取り上げる本は、NHKスペシャル『人体 ミクロの大冒険』の書籍版、『人体 ミクロの大冒険 60兆の細胞が紡ぐ人生 (角川書店単行本)』です(最多の細胞の正解はこちら*1)。 内容紹介引用 一言感想 内容の一部紹介 妊娠中に母親が痩せていると子供は太り…

読書メモ:『The Man Who Mistook His Wife for a Hat』

日本語版は『妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ文庫NF)』 脳障害を持った患者のエピソード集。 脳の不思議さ・複雑さを思い知ることできます。結構昔の本なのですが、それぞれの症状の人間的な側面に光が当てられているので古さは感じませんでした。 原著で…

読書メモ:『意識はいつ生まれるのか』

「意識とは何か、どうすれば測れるのか?」という謎に対して 意識に関して唯一、真に有望な基礎理論 とされる統合情報理論扱って迫るポピュラー・サイエンス本。 興味深い題材がとても読みやすく書かれており、楽しめました。 人体というのは本当に面白いな…

読書メモ:『代替医療のトリック』

3ポイントメモ 代表的な代替医療である鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法の4つについて、プラシーボ効果以上の効果はないと言ってほぼ間違いない 効果がない、と証明されているものがほとんどであり、効果があると実証されているものは皆…

読書メモ:『NEXT WORLD』

多種多様な「未来の社会の形を大きく変える可能性のある技術」が紹介されている本。 紹介されている技術の幅が広いので、こういうネタが好きで既にいろいろ知っている、という人でも、多くの新しい話題に触れることができると思います。 こういう革新的な技…

読書メモ:『IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる』

3行まとめ(ドキュメンタリー本にまとめも何もないですが) ワトソンは自然言語を理解する質問応答システムであり、アメリカの人気クイズ番組「ジョパディ!」で人間のチャンピオンに勝つという目標のもと IBM によって研究開発された(結果は完勝) ブラン…