「怖い感じ」とは何か:『恐怖の哲学―ホラーで人間を読む』
「ホラー作品はなぜ娯楽として成立しているのか」など恐怖を主題とはしているが、それはあくまで具体例。
そもそも「感じ」や「情動」とは何で、どういう役割を果たしているのか、というもっと広い疑問を、生物学、脳科学を採り上げて解説していたため、ホラーそのものにほとんど興味がなくてもとても楽しめた。
ハードカバーで 2000 円強で売られていてもおかしくない内容だと思うが、新書で1000円程度。素晴らしい。
- 作者: 戸田山和久
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2016/01/07
- メディア: 新書
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キーワード
中核的関係主題
それぞれの種類の情動の根底にある、自分と状況との関係的な利害をまとめたもの。
ソマティックマーカー仮説
情動的な身体的反応は、その反応を引き起こした対象の価値づけを反映したマーカーとして働く。その意味で、身体的反応は「ソマティックマーカー」と呼ばれる。
ソマティックマーカーは意思決定の際に、それが評価している価値づけに合致する選択肢を選ばせるバイアスとして働くため、自分にとって有利な意思決定を素早く行うにはソマティックマーカーが必要である、という仮説。
身体化された評価理論
情動を、中核的関係主題に対応するようにパターン化された身体的反応をレジスタすることで外的状況を評価する心的状態とみなす理論。
哲学的ゾンビと2種類の意識
意識の機能面に焦点を絞った意識の概念を「心理学的意識」(「怖いから逃げよう」などの出力に繋がる意識)、意識の感じの面に焦点化した意識の概念を「現象的意識」(怖いときに現れる、独特の感じ)と呼ぶ。
哲学的ゾンビは心理学的意識は持っているが現象的意識を持たない存在といえる。
AIR 理論:Attended intermediate-level representations
「注意の的となっている中間レベルの表象」。中間レベルの知覚の情報が、注意(脳内でどのように情報が流れるかを調節するプロセス)によってワーキングメモリに送られることにより意識体験が生み出されるとする理論。