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「気づいた時」には脳で何が起こるのか:『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』

被験者の自己申告による「気付き」に焦点を当てて科学を遂行するという試みが、単純でありながらなるほどと思えて面白かったです。

無意識と意識の違いに焦点を当て、錯視や認識できるかできないかの境目となるような情報の提示方法を利用し、同じ刺激に対して被験者が気付く・気付かないの違いがどのような脳の活動の違いに基いているのかを調べることで、意識される経験に特有の脳の活動を明らかにしています。

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

それによると、意識されない経験は脳の下位組織から上位組織に向けた刺激の伝達に留まるのに対し、意識される経験には上位組織から下位組織へのフィードバックを含めた脳の広範囲で同期される情報の交換が存在するとのこと(グローバル・ワークスペース理論)。

また、この反応を基準として赤ちゃんに意識はあるのか、植物状態の患者に意識があるのかといった判定に用いることもできるそうです(ただし偽陰性の問題は排除できない)。

以前読んだ「意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論」にかなり近い本ですが(だいぶ内容を忘れてしまいました。また読みたいです)、やはり意識や脳といった人体、すなわち自分が自分の本質だと思っているものは一体何なのか、という事を考えさせてくれる本は面白いです。