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小説感想:『紙の動物園』

とても良い短編集でした。

全体的に感傷的な文章なのですが、短編集にありがちな「ちょっといい話」ともまた違う、不思議な感じな物語が多かったです。

特にお気に入りの作品は「紙の動物園」、「もののあはれ」、「良い狩りを」。それ以外の作品もハズレはなし。

クリスマス・プレゼント』のようにズバっと衝撃的などんでん返しがあるわけではなく、『しあわせの理由』のように SF色全開というわけでもありませんが、お気に入りの短編集の1つとなりました。

以下の一部の物語毎のメモ書きは若干ネタバレを含むので、未読の方はご注意を。

紙の動物園

表題作。母親との思い出、母親に冷たくあたってしまった後悔という普遍的なテーマが幻想的に美しく描かれた作品です。

もののあはれ

碁を絡めて、人と人との繋がりの中で生まれるヒーローについて描いた作品。自分の役割を果たそう、という気になります。

個々の石はヒーローではないけれど、ひとつにつどった石はヒーローにふさわしい。 ぼくらの有り様は、他人の命がおりなす網のなかでどこにしがみついているかで定められている。

月へ

地球人と月人を比喩として並列に添えながら、移民問題と法律をテーマにした作品。

この世界にはおぞましい物語がたくさんあるが、法律は一部の話だけ耳を貸す価値があると見なしている

良い狩りを

世界の近代化によって魔力を失った妖狐と妖怪退治師が、近代技術によって元の自分を取り戻すスチームパンク系の作品。