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プラシーボだっていいじゃない:『「病は気から」を科学する』

「病は気から」を科学する

「病は気から」を科学する

ポイント

  • プラシーボであっても治療効果・鎮痛効果があるのであればそれは有用で、利用価値がある。
  • プラシーボでは、実際に脳内からエンドルフィン(鎮痛作用のある化学物質)が産生されるなど、実体的な体への効用がある。つまり、プラシーボは完全に気のせいというわけではなく、体の何らかのメカニズムを稼働させることによって効果を発揮している。
  • 悪性の効果を示すプラシーボ(ノセボ効果)も同じように実際に体に何かが起きていると言える。一部のプラシーボはノセボによる「必要以上の痛み」を緩和することで作用している可能性がある。
  • 患者に「これはプラシーボ薬です」と伝えて化学的な効果のない薬を投与してもプラシーボの効果を維持することができるため、「患者を騙している」という倫理に対する批判をかわす手段はある。
  • どのプラシーボが何に作用するかは、文化や個人によって異なる。

感想

代替医療にはプラシーボ以上の効果はない」*1という批判に対して「プラシーボであろうと効果があるならいいじゃない?」という方向性で、プラシーボや催眠術、瞑想などによる「心」への働きかけが「体」にどう作用するかについての研究をまとめた面白い本。

本を読む前は「ホメオパシー?バカじゃないの?」という考えだったものの、読み終わってみると「バカにできたものじゃないな(まぁ自分では手は出さないけど...)」と考えが変わりました。その人が望んだ効果が得られるのであれば、手段について他人がとやかく言うことではありませんね。

プラシーボが「なぜ・どのようにして効果があるのか」については、まだそこまで科学的なメカニズムの解明は進んでいないようであるものの、「効果があるようだ」という研究(実験)結果は想像していた以上に出ているようでした。

一般に誤解や誇張がなく受け入れられて、ケアや治療の一貫に組み込まれていくためのハードルは高そうですが、上手く活用できれば社会的なメリットは大きそうなので、研究が進むと良いなと思います。

*1:ちなみに「代替医療の効果(はない)」という話については『代替医療解剖(新潮文庫)』が面白かったです。