書評:『Reality is Broken』(幸せな未来は「ゲーム」が創る)
3行まとめ
- 現実はゲームのように、明確で自分の能力に合った目標とその達成のための手順を与えてくれることがなく、即応的なフィードバックや分かりやすい報酬にも欠けているので、取り組みにくい
- 逆に、ゲームのそのような仕組みを現実に取り入れることで、個々人がより良い行動(特に「すべき」とわかっていても何らかの要因で実行に移すのが困難もしくは億劫な行動)を取る動機付けの支援が可能となる
- 個々人の問題のみならず、World of Warcraft のようなオンラインゲームが示した、ゲームの持つ、大衆を魅了し、協調させ、共創に至らせるメカニズムを現実の社会問題への取り組みに転嫁させることで、それらを解決に導く力を生み出せる
ゲームがなぜ現実よりも"優れている"のかに触れながら、オンラインゲーム から、代替現実ゲーム(Alternate Reality Game)、ポジティブ心理学、シリアスゲームなど、ゲームそのものやゲームの仕組みを活用したアクティビティについて、その特徴と活用例、可能性について広く(少なくとも素人目には)深く書かれた本です。
後半の章は、オンラインゲームがその可能性を示した大規模な協調性、共創性に注目しているので、基本的にお一人様ゲーマーな自分には若干の他人事感があったり、オンラインゲーマーの可能性を少々過大評価し過ぎでは?と感じる部分もありましたが、起こりうる現象としては概ね納得できました。
著者が実際に作成した、多くのゲーム・プロジェクトの話が載っているので、自分の作品や行動管理ライフハックのネタの参考にもなると思います。
- 作者: ジェイン・マクゴニガル,妹尾堅一郎,藤本徹,藤井清美,武山政直
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
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本書中で紹介された小ネタ・キーワード・後で調べたい事柄リスト
- Chore Wars:家事に経験値を設定して家族や同居者と競争できるサイト
- Quest to Learn:ゲームの仕組みを取り入れたパブリック・スクール
- 墓地で過ごした時間が短いほど、死の恐怖や不安に駆られやすい
- Character Strengths and Virtues: A Handbook and Classification:あるゲームの参加者に、自分の強みとその活かし方を指示するために参照された本。気になるけど、Kindle 版でも約1万円。800ページ位あるとはいえ、高い!
- 研究によると、ゲームは1日3時間までが適当(結構長いような…。参照先は不明、もしかしたらゲーム業界に近い側から来ているかもしれない?)、それ以上プレイするとゲームのポジティブな効果は急激に低下し、しまいにはネガティブに作用する(派兵中の軍人など特にストレスの高い状態にいる人はより長い時間のプレイでもポジティブな効果が続くとのこと)
著者の TEDトークでも本書の主張の一部に触れることができます。