小説感想:『リヴァイアサン: クジラと蒸気機関』
- 作者: スコットウェスターフェルド,Scott Westerfeld,小林美幸
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/12/06
- メディア: 文庫
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第一次世界大戦頃の世界情勢をベースにしつつ、
遺伝子操作された動物を基盤とする、英国などの〈ダーウィニスト〉と、蒸気機関やディーゼル駆動の機械文明を発達させたドイツら〈クランカー〉
という形で対立する勢力の技術基盤は大きく史実と異なるスチームパンク的な小説。
世界設定も技術の描写も面白く、暗殺されたオーストリア皇太子夫妻の息子で〈クランカー〉サイドの公子アレックと男装して航空隊に入隊した〈ダーウィニスト〉サイドのデリンの両者も「主人公感」があって楽しめました。
三部作の1巻で、続編『ベヒモス: クラーケンと潜水艦』に続きます。
小説感想:『トム・ソーヤーの冒険』
- 作者: トウェイン
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/12/20
- メディア: Kindle版
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子供の自己陶酔や知ったかぶり、大人の手のひらくるりな感じが嫌味なく爽やかに(?)書かれていて、「わかる!」感に満ちていました。
訳文もすごく自然で、とても面白かったです。
ゲーム感想:『Doki Doki Literature Club!』
「子供や心の弱い人にはオススメできません」
というフレーズで少し前に話題になった『Doki Doki Literature Club!』をクリアしました。
とりあえず、気になった人はやりましょう!無料ですし、最後まで(スタッフロール見るまで)プレイするのにかかる時間もだいたい 3, 4 時間くらいで済みます。非公式の日本語化パッチもあります。英語の難易度は高くないですが、筆記体が読めないとキャラクターの1人の詩を読むのが辛いです(私は読めないのでほぼ飛ばしました…)。
ホラー要素っぽいものがあって恋愛ゲームにしては新鮮味がある、といった単に奇をてらった脅かしではない、面白い仕掛けを体験することができます。
以下、ネタバレ注意。
キャラクターによるキャラクターであるという認知、というメタ的な仕掛け。最近いくつか他の作品でもメタなネタの例を見るようになっている気がしますが、挑戦的でオリジナリティがあって面白いものが多いです。
今回の肝は「恋愛ゲームで攻略対象ではないキャラクターが、自分や周りの『友達』は恋愛ゲーム内のキャラクターであるということを認識しており、さらにゲームそのものに対して(というよりむしろ『現実』に対して)一定のコントロール能力を持っている」ゆえの悲しみ、苦悩…みたいなものでしょうか。
周りの『友達』が自由意志もなく『主人公』に惹かれるように作られていること。
自分はゲームシステム的に「攻略対象」ではないので『主人公』(= プレイヤー = 唯一『キャラクター』ではない存在)に好かれることがないということ。
その状況を打開すべく自分にできる方法でゲームシステムや『友達』を操作するも上手くはいかず、果ては『友達』を削除するに至ること。
自分や周りの『友達』の存在そのものが「ファイルを消す」だけで消えるような希薄なものであると自覚しているということ。
...
最終的には彼女のファイルを削除することで次のステップに進むわけですが、その結果次のキャラクターが部長に昇格し、同じような認識を得るというどん詰まり(CGを全部集めれば若干救いがあるような感じにはなりますが、その先には何もない)。。。
自分の存在の希薄性や存在意義のなさ、もしくは存在意義が予め決定されているという状況に苦悩する話を上手くゲームに落とし込んだ作品だと思いました。
あと、クリア後に調べて以下の動画で知ったのですが、ゲーム本編ではないところにある「仕掛け」も凄いです。そしてこの謎を解いた人々はヤバいです(音声ファイルに変換して波形をQRコードとみなしてURLを取得する!?)。この中で示唆されている続編(というか前編というか)が実際に登場するのか、楽しみです。
Game Theory: Doki Doki's SCARIEST Monster is Hiding in Plain Sight (Doki Doki Literature Club)
正しい質問の力:『Wait, What?』
Wait, What?: And Life's Other Essential Questions
- 作者: James E. Ryan
- 出版社/メーカー: HarperOne
- 発売日: 2017/04/04
- メディア: Kindle版
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ポイント
- "Wait, What?"
- 議論や否定に入る前にまず必ず事実確認を行うこと。
- "I wonder...?"
- 好奇心を忘れずに。
- "Couldn't we at least...?"
- とっかかりを見つけて第一歩を踏み出そう。
- "How can I help?"
- 相手の自主性を尊重しつつ手を差し伸べよう。
- "What truly matters?"
- 目の前にある問題の肝は何だろう?自分にとって大切なことは何だろう?
感想
この手の本は基本的には当たり前のことを言っていて、その当たり前のことをどう読者に響かせるかがポイントだと思うのですが、個人的にはあまり…という印象でした。
読みやすくはあったのですが、少し無理をした説明や例でもって結論を表題の質問にまとめている気がします。とはいえ世間の評判(Amazon.com のレビュー)は良いようなので、自分のような見方の方が少数派な可能性は高そうです。
ページ数は短いですが、自分が購入した際には200円程度だったので、コスパは悪くありませんでした。
アルゴリズムから思考法を学ぶ:『Algorithms to Live By』
Algorithms to Live By: The Computer Science of Human Decisions
- 作者: Brian Christian,Griffiths
- 出版社/メーカー: William Collins
- 発売日: 2016/04/19
- メディア: Kindle版
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ポイント
- 真に困難な、網羅的な計算で扱える範囲を超えた問題を扱うために、現代のアルゴリズムは運(ランダム性)、正確さと時間のトレードオフ、近似を利用している。
- コンピューター・アルゴリズムが難しい問題やリソース(時間・メモリ)管理にどうやって対応しているかは人間の意思決定の方法の参考にできる。
- そもそも計算(思考)というのは難しいものだから、なるべく計算しなくて済むように物事をデザインすべき。
- 最適なアルゴリズムを学び、それに従っておけば、例え最適な結果が得られなかったとしても「自分は最善を尽くした」と諦められる。
感想
具体的に「この問題はこう取り掛かれば最善の結果が得られる確率が最も高い」という例もいくつか紹介されていますが、それよりもや上に挙げたようなふわっとした全体のテーマが印象に残りました(現実問題として、具体例を上手く使えるシチュエーションがあまりイメージできなかった、というのもあるかもしれませんが)。
「そもそも計算(思考)というのは難しいものだから、なるべく計算しなくて済むように物事をデザインすべき」は著書の中では「Computational Kindness」として結論の中で語られていましたが、 Nudge、行動経済学に通じるものがありますね。全くもってその通りで「どうすれば渋滞を回避できるか」、「どの保険を選べばよいのか」のようなことに(人間が)頭を使わずに済む世界になっていけばよいなぁと思います。