母の愛とアパルトヘイト:『Born A Crime: Stories from a South African Childhood』
南アフリカ出身のコメディアン、 Trevor Noah という方の回顧録。
この方を知っていた訳ではないのですが、ビル・ゲイツ氏の今年の夏のオススメ本の一冊に紹介されていて興味を持ったので読んでみました(gatesnote | 5 Good Summer Reads)。
知らない人の伝記やエッセイというのは結局興味が持てなかった、ということも多々あるのですが、この本はとても面白かったです。読み物としては2017年上半期の一押し。
Born A Crime: Stories from a South African Childhood (English Edition)
- 作者: Trevor Noah
- 出版社/メーカー: John Murray
- 発売日: 2016/11/17
- メディア: Kindle版
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アパルトヘイトという人種差別政策の下で、その政策の不合理さの証明とも言える黒人の母、白人の父を持って生まれた「colored」としての著者の子供の頃からの生活の様子がユーモアと鋭い洞察を持って書かれています。
全体として特に印象的なのは、そもそもアパルトヘイト下で、混血の子どもを生み、育てようと決意しそれを実行した著者の母親の芯の強さですね。
何時間もかけて教会に通うなど信心深いところがあり、その辺りの行動の合理性については信心深いわけではない著者との会話が面白おかしかったりするのですが、黒人の女性、というアパルトヘイト下では多くのハンディキャップを背負う立場でありながら、仕事を手に入れ、子どもを守り育て抜いた、その意志と行動力には頭が下がります。本当にすごいです。
一方、著者との接触がしばらく断てれてしまっていた実父との再会のエピソードにも胸に来るものがありました。
アパルトヘイト社会を、その渦中で育った方の視点から書かれている、という点で勉強にもなったと思います。英語も平易で読みやすく、いろいろな面でオススメです。