秩序はデザインによってではなく進化によって生まれる:『進化は万能である:人類・テクノロジー・宇宙の未来』
生物のみならず、科学・道徳・経済・宗教など人が生み出したありとあらゆるものが、「進化」という変化と淘汰を繰り返す試行錯誤のプロセスを経て今に至る。このボトムアップ的な力を認め、受け入れるべきである。
歴史が一人の偉人の力によって動かされ、世紀の発明が一人の天才の英知によってなされた、というのは誇張である。人々は往々にして個人の力や意志、単純な因果関係を過大評価する。実際には生まれた時代と場所、それにそれまでの文化・科学の積み重ねによる影響が大きく、例えばたとえアルバート・アインシュタインが生まれなくとも、相対性理論は概ね同じ時代に生まれていただろう。個人の力やリーダーシップが重要でないというわけではないが、物事は段階的なステップを踏んで進歩するものであり、特定の個人を必要以上に崇めるべきではない。
そしてそのような進化の塊である複雑な社会を、人為的なトップダウンの政策・規制によって社会を導こうとする試みが成功するのは稀である。世界大戦、世界恐慌、世界金融危機などの不幸は、意図的な計画を実行しようとする少数の人の意思決定の結果もたらされた。
世界は、上からの誰かによるデザインがなくとも、下からの自然発生的な変化の力によって、漸進的に、否応無しに良くなっていくだろう。
- 作者: マット・リドレー,大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之,吉田三知世
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/09/21
- メディア: 単行本
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著者のエネルギーを感じる、刺激的で面白い本でした。