2ドルで親の魂売りませんか?:直感と合理性について
「私 (あなたの名前) は、死んだら、スコット・マーフィー(*1)に魂を2ドルで売り渡すことを約束します」
こんな用紙を渡されて、サインしたら本当に2ドル貰える場合、あなたはサインしますか?
これは『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』という本(心理学に重きがおかれていて政治に興味がなくともとても面白いです。『ファスト&スロー』のような本が好きな人にはオススメ)に紹介されていた興味深い実験の一つです。どのくらいの人がサインしたか、実験の結果は最後に書いてありますので、気になる方は下までどうぞ。
この実験の売却対象は自分の魂なのですが、この場合は自分ならサインしますね。
なんとなく感じる気味の悪さや不快感を否定するわけではありませんし、目先の2ドルに目が眩むほどお金に困っているわけではありません。
ただ、「私は合理的な存在であるべきで、私は魂の存在を信じていない。これにサインしないということは自分の不合理性を認めることになる。」という、何というか「弱みを見せたくない」という心理が働く気がしています。自分がどのような選択をしたかが他人に知られるような場合には特に。
一方で、この実験がタイトルで挙げたように「私(あなたの名前)は、私の親が死んだら、...に私の親の魂を2ドルで売り渡すことを約束します」という具合に親(もしくはその他の家族、友人)の魂を対象にしていた場合、「たとえ存在しないものでも、自分のものではないから」となるべく合理的に見える形で正当化してサインすることは拒否するでしょうね。。。
...少なくとも2ドルなら。いくらなら売るのか、というのはなかなか想像がしにくい(1万円超えたら考えるかなー)のですが、きっと私の直感がオファーされた金額によって判断を下し、思考がその判断を正当化する理由を後付してくれることでしょう。
2ドルで親の魂でも売るとか、いくら以上だったら売る、いくら積まれても売らない等々、いろいろな人から意見を聞いてみたいものです。
ちなみに実験の結果は、バージニア大学の学生30人の中で自ら進んでサインした人は 23%。また、サインしなかった人に対して研究者が理由を尋ね、(その理由の非合理性を指摘しながら)サインするように説得を試みた場合は追加で 17% の人がサインをしたとのことです。文化、年齢によって大きく差が出るでしょうね。
社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学
- 作者: ジョナサン・ハイト,高橋洋
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2014/04/24
- メディア: 単行本
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