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本やゲームの感想など

自分に問いかける:『「良い質問」をする技術』

「良い質問」をする技術

「良い質問」をする技術

ポイント

  • 良い質問とは、聞かれた人が答えたくなり、かつ気づきを与える質問
    • 軽い質問:答えたい・答えやすいけど気づきがない(過去の成功体験についてなど)
    • 重い質問:気づきがあるけど答えたくない・答えにくい(過去の過ち・後悔についてなど)
  • 組織の中でよく使われている質問は、その集団の「本質」を表す
    • 「売り上げはどうか?」とトップが問い続けると売り上げを重視する企業風土が育まれる
  • 「伝わったメッセージ」が「伝えたメッセージ」
  • Vision(手に入れたいもの), Value(価値観), Vocabulrary(よく使う言葉) に注目し、疑問詞と組み合わせて質問を作る

感想

コンサルタントコーチング関連の人がクライアントに対して行うにあっての「良い質問」についての本でした。 もっと軽い、ビジネスに役立つテクニック的なものを想像していたのですが、これはこれで面白かったです。

自分に良い質問を問い続けることで意識を整える、というのは継続できれば良さそうに思えるので、少し意識してみようと思います。

行動経済学まんが:『ヘンテコミクス』

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

ポイント

  • 人間とは、かくもヘンテコな生きものなり。

感想

どこかで見たことがあるような画風のマンガで、人間の「考えてみると少し変わった振る舞い」をまとめた面白い本。

一部の例については「うーん、そうかな?」と首を傾げるものがあったものの、基本的にはマンガと行動経済学的な用語が上手く結びついていて、「そうだよね」と納得できるものでした。

行動経済学に興味を持った人への導入としてオススメできることはもちろん、『予想通りに不合理』や『ファスト&スロー』を読んだことがある人の気軽な復習にも良さそうです(自分は後者)。

プラシーボだっていいじゃない:『「病は気から」を科学する』

「病は気から」を科学する

「病は気から」を科学する

ポイント

  • プラシーボであっても治療効果・鎮痛効果があるのであればそれは有用で、利用価値がある。
  • プラシーボでは、実際に脳内からエンドルフィン(鎮痛作用のある化学物質)が産生されるなど、実体的な体への効用がある。つまり、プラシーボは完全に気のせいというわけではなく、体の何らかのメカニズムを稼働させることによって効果を発揮している。
  • 悪性の効果を示すプラシーボ(ノセボ効果)も同じように実際に体に何かが起きていると言える。一部のプラシーボはノセボによる「必要以上の痛み」を緩和することで作用している可能性がある。
  • 患者に「これはプラシーボ薬です」と伝えて化学的な効果のない薬を投与してもプラシーボの効果を維持することができるため、「患者を騙している」という倫理に対する批判をかわす手段はある。
  • どのプラシーボが何に作用するかは、文化や個人によって異なる。

感想

代替医療にはプラシーボ以上の効果はない」*1という批判に対して「プラシーボであろうと効果があるならいいじゃない?」という方向性で、プラシーボや催眠術、瞑想などによる「心」への働きかけが「体」にどう作用するかについての研究をまとめた面白い本。

本を読む前は「ホメオパシー?バカじゃないの?」という考えだったものの、読み終わってみると「バカにできたものじゃないな(まぁ自分では手は出さないけど...)」と考えが変わりました。その人が望んだ効果が得られるのであれば、手段について他人がとやかく言うことではありませんね。

プラシーボが「なぜ・どのようにして効果があるのか」については、まだそこまで科学的なメカニズムの解明は進んでいないようであるものの、「効果があるようだ」という研究(実験)結果は想像していた以上に出ているようでした。

一般に誤解や誇張がなく受け入れられて、ケアや治療の一貫に組み込まれていくためのハードルは高そうですが、上手く活用できれば社会的なメリットは大きそうなので、研究が進むと良いなと思います。

*1:ちなみに「代替医療の効果(はない)」という話については『代替医療解剖(新潮文庫)』が面白かったです。

プロジェクトの成功・失敗を予見する:『アドレナリンジャンキー』

アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン

アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン

エンジニアリングを主とするプロジェクトで見られる、良いパターン・悪いパターンを各1~4ページくらいで説明した本。各項目が短くまとまっていて読みやすいです。

適切な切迫感を持って誰が何をいつまでにするかを明らかにすること、評論家・批評家にならずプロジェクトの成否を自分の成否を同一視すること、プロジェクトを正しく把握するだけでなく正しく動かす努力をすること、などが自分には刺さりました。

特に切迫感に関しては、期限が長いタスクではどうしても保てなくなることがあるので、上手く定期的に締め切りなどを設けて意識できるようにしたいところ。

これは仕事のみならず、プライベートでの目標でもそうなので、来年に向けて気をつけたいです。

小説感想:『ここから先は何もない』

小惑星探査機が採取してきたサンプルに含まれていた、人骨化石を巡って繰り広げられる長編 SF。

ここから先は何もない

ここから先は何もない

設定・結末に面白みを感じる部分はあったものの、登場人物があまり魅力的に感じられなかったことと、トリックの種明かしや天才級ハッカーという設定の主人公が出来ることの都合の良さにあまり納得がいかなかったこともあって、小説全体としては「まぁまぁ普通に面白かった」という感想です。

Amazon 上でのレビューでも書かれていますが、誤植が多いのも全体の印象を下げていて勿体無いですね。

著者の後書きによると

星を継ぐもの』という作品に、ある不満を持っています。その不満を解消するために、わが身の非力もかえりみずにこの作品に手を染めました。

とのこと。実際どんな不満だったのか、は推して知るべし、ということなのか、書かれていないです。

「星を継ぐもの」の良さは、壮大な SF 設定に、わかりやすく「謎解き」という道筋があって、それでいて登場人物に魅力があったことにもあると思うのですが、それと比べてしまうと本作品の登場人物の魅力の無さはより気になるところ。エンタメ小説として面白さを狙ったというよりは、思考実験に物語を載せた、というような形なのかもしれません。