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本やゲームの感想など

小説感想:『エンディミオンの覚醒』

ハイペリオン』シリーズ四部作第四部、完結編。

上巻辺りまでは第三部『エンディミオン』に近い主人公勢 vs 権力という冒険譚的な構図で話が進みますが、その後段々と、宗教的・思想的な話が増え、SF よりはむしろファンタジー的に思える能力の開示も交えてこれまで三部かけて張ってきた伏線を回収していく種明かしパートに入ります。

ハイペリオン』の設定の一部に否定が入るなど、種明かしには気になる部分もありましたが、時空間転移を扱っている SF作品としては概ね納得感のいくものだったかなと印象です。そもそも時空間転移(特に時間転移)をツッコミどころなくまとめるのは不可能事に思えますし、自分はあまり細かいことを気にしないので。

決戦に向けて懐かしの面々が再登場するなど、長編ならではのストレートにワクワクする要素もふんだんに取り入れられていて、最後まで勢いで十二分に楽しめました。

後書きによると、ハイペリオン四部作は総計で400字詰め原稿用紙7000枚とのこと。小学生の頃、原稿用紙数枚分の作文で四苦八苦していた自分には想像も出来ない量です。これだけの超大作を書ききった著者と、それを訳しきった訳者の技量と熱量に感謝。

小説感想:『エンディミオン』

ハイペリオン』シリーズ四部作の第三部(後編一部)。
ハイペリオン』、『ハイペリオンの没落』からは約300年後の世界。

エンディミオン(上)

エンディミオン(上)

「時間の墓標」を通って未来に渡った12歳の少女と、老詩人によってその守護者に選ばれた27歳の青年、1人のアンドロイドが、「ウェブ」崩壊後の世界を「聖十字架による復活の奇蹟(体に埋め込んでおくと死んだ後に肉体が再生される寄生体入り十字架)」によって牛耳る教会から逃げながら目的地を目指す物語。

主人公が過去を振り返って語る、という形で記述されていて、時折謎めいた伏線は張られるものの、基本的に本筋はヒーロー・ヒロインの主人公勢 vs 権力、というわかりやすい構図で、ハードなSF的な要素も(時折張られる伏線が気になる以外は)控えめなので読みやすかったです。権力側の追手の実行部隊にも魅力があり、王道の冒険モノという感じでした。

相変わらず、500ページの上下巻が終わった後に待つのは続きは『エンディミオンの覚醒』で!という長編っぷり。あと少し…。

ゲーム感想:『ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団』

PS Vita で発売されたゲームの PS4 移植版。「ストーリーが良い」という評判を聞いていたので、遊んでみました。

一通りクリアしたので、ストーリーのネタバレはなしで感想を。プレイ時間は 60時間ほど。

個々の項目についての前に全体的な感想を一言でまとめると「良いゲーム、でもいろいろと(特にシステム面が)惜しい!」です。

ストーリー

前評判通り、ダークではあるものの無意味にダークで悪趣味、という訳ではなく、最終的には遊んでよかったな(これが重要)、と思えるようなものでした。

文章表現のみですが結構エグい演出(人が食べられるなど)はあるので、そのへんの耐性がない方にはちょっと薦められませんが…。

難点を挙げるとすれば、ダンジョン攻略の進行とストーリーの進行が直接リンクしていない部分が多く、ダンジョン攻略がストーリーの一部ではなく、ストーリーを進めるためのタスクになってしまっている、と感じる部分がある、というところ(まぁ実際そうとも言えるのですが)。

ダンジョンであるアイテムを手に入れたから、それを元にストーリーが進む、というパターンは納得できるのですが、ダンジョンで一定階層に進んだらストーリーが少し進む、しかしそのストーリーのイベントとダンジョンの進み具合は特に関係がない、となると「うーん」という感じがします。

ストーリーが全然進まなければそれはそれでストレスになるので、ある程度は仕方ないのかなとは思うのですが、やっぱり遊んだ結果によってストーリーが進む、という形が好みです。

ちなみに、ストーリーをクリアするだけで話の大筋はわかるものの、散りばめられた考察要素は多いです。クリアした今もまだ完全には理解できていません。

キャラクター

まぁ、ルカがかわいいですよね。本当に。癒やされます。こういうキャラクターは一歩間違えれば「うざい」という印象にもなり兼ねない気はするのですが、そんなことも感じませんでした。台詞回しと声優さんの力でしょうかね?

システム(管理周り)

一番の難点は使用可能キャラクターの多さ。このゲームの特色であり、「旅団」らしい、といえばらしいのですが、全員をしっかり管理するのはかなり大変です。

例えば強い装備が手に入った時、それを主力キャラクターに装備させるとなると、そのお下がりを次点のキャラクターに装備させて…という連鎖が発生しますが、メンバーが増えるとそんなこといちいちやってられない…という感じになってきます。

一方で、一番弱い装備をつけているキャラクターに今入手した装備をつければお下がりの連鎖は避けれれますが、それはそれで誰の装備が一番弱いか、ということも覚えていられないという…。

結局ある程度適当に装備を入れ替えることにした結果、気がついたら強い装備を遊ばせてしまっていた、ずっと弱い装備のままのキャラクターがいた、なんてこともありました。

また、装備のパラメータ数が多い割に、「攻撃力」と「防御力」しかソートに使用できないために、基本性能が「回避力」の「靴」や多彩なパラメータ要素を持つ「装飾品」をいい感じにソートできないなど、機能的にも痒いところに手が届かない部分があります。

同じ装備品でも個体毎にパラメータが異なることがある、というのも管理をややこしくしている要因の1つ。

もし同じようなゲームが出る場合には、メンバー数を減らすか、システム面を改善するかを期待したいところです。

システム(戦闘)

戦闘参加メンバーが多い = 1ターンにかかる時間が長い、ということになるので、後半は見ている時間が長くなりがちです。特に敵から全体攻撃を受けると、それだけで結構な時間を持っていかれます。一応戦闘の早送りや一部メッセージの省略はできるものも、それでは物足りないくらいに時間がかかります。最終的にはこれが一番の難点かと。

あとは、クリティカルヒットの威力や状態異常の効力の強さ、ボス級キャラクターの一撃の重さなどから、運要素は大きめ、という印象。装備やスキルである程度自分に有利になるようにコントロール可能なので、そういうものとして受け入れればそんなに不満点ではありませんが、勝ちも負けも運次第、という感じは多少あったかもしれません。

他に細かいことを言えば、攻撃属性の「霧」や「泥」、状態異常の「腐臭」や「深淵」など、一般的なゲームとは微妙に外れた項目も無駄に学習コストをかけさせているのでは…という印象がありました。

システム(マップ)

ここはあまり不満点はありませんでした。探索は快適で、次に行くべき場所に!マークが付いているので、やることに迷うことはなかったです。

音楽

良いです。サントラ付き限定版を買っておいて正解でした。ダンジョン曲の雰囲気、戦闘曲のテンポ、イベント曲のしんみり感など、どれもいい感じです。

お気に入りは「Run About」、「Closed Flower Garden」や「A the ha lluri da」など。


システム周りでいろいろと苦言を呈していますが、プレイしてよかった、という感想は変わらずです。

これからも王道とは少し外れたストーリーのゲームを期待しています。

小説感想:『ハイペリオンの没落』

英国SF協会賞/ローカス賞受賞。『ハイペリオン』の続編(というより、後編)。

ハイペリオン』に引き続きこちらも超大作で、上下巻それぞれ 500ページ程。『ハイペリオン』と合わせれば脅威の約 2000ページ!

それでいて引き伸ばされた感覚が全くない、密度の濃い物語になっているのが凄いですね。基本的に「嫌な奴」が登場せず、巡礼はもちろん、それ以外のキャラクターもきちんと活躍している、ないしは役割を果たしているという点も良いです。

強いて難点を言えば「雲門」(本書に登場する超 AI のひとつ)の喋り方(?)が禅問答(?)のような形式になっていて何言ってるのかわかりにくい、ものによってはさっぱりわからない(後で自分で少し分かりやすい要約をしてくれたり、聞き手が解説してくれたりはする)ことくらいでしょうか。

これで一端物語にはある程度の区切りはつきますが、ここまできたら、ということで次は 300年後の世界らしい『エンディミオン』に進みます。

小説感想:『ハイペリオン』

ヒューゴー賞ローカス賞星雲賞を受賞した長編小説。

400ページ × 2 でまだ終わらんのか!というかメインイベントは始まってすらいない!

続編があることは知っていましたが、まさかここまで中途半端な形で『ハイペリオン』は終わりとは。。。

若干昔の作品なので単語の古さ(特殊な語が多いので古さは関係ないかも?)や情景描写の重さには若干の読みにくさを感じましたが、物語の面白さはさすがに評判通りで、いろいろな要素が詰まっていました。これだけでも面白い、しかしここまで読んでしまうと続きも読まざるを得ない、そんな感じで読み始めるには覚悟のいる作品です。

読んでしまった以上、おとなしく『(ハイペリオンの没落)http://amzn.to/2yoh4Ze』に進みます。