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本やゲームの感想など

「言葉にできない」は「考えていない」と同じ:『「言葉にできる」は武器になる。』

タイトルに強く同意したので、何冊目かはわからない「この手の本」を読了。

内容自体は類似のこの手の本とさほど変わりはなく、1時間強で読めてしまって 1500円 なのであまりコスパは高くない(コスパを「内容の量/金額」で計算するならば)が、さすがに文章や図はわかりやすいので十分オススメできる。

出費を抑えたいのであれば、立ち読みして重要なポイントを記録しておくか、Kindle 所有者であれば『伝わっているか?』や 『ここらで広告コピーの本当の話をします。』辺りをオーナーライブラリの権利もしくは Kindle Unlimited の権利で読むかすればよい。

ただ、やはりタイトルに強いメッセージ性があるので、目に見えるところに置いておくと普段から意識できて良いのではないかと思う。

「言葉にできる」は武器になる。

「言葉にできる」は武器になる。

ゲーム AI の現在と未来:『人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか』

身体を持つキャラクターが自身を動かし世界とインタラクションするための AI、チーム・群衆をコントロールする AI など、画像認識や音声認識といった狭い範囲での AI の例に留まらず、ゲーム内世界の実現や人間的なロボットに必要な幅広い範囲のトピックを扱っている。

知能の定義の問題から、実際に販売されたゲームで使われたテクニックの例まで挙げられており、内容は面白かった。

ただし、図は多いものの、あまり直感的ではなくわかりにくいものも多い。また、一読してわかるような誤字脱字や(内容がではなく普通の日本語として)わかりにくい文章が散見され、その辺りは少しもったいない。

人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

技術で人と社会を豊かに:『ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術』

人の生活をより良くすることを意識して製品・サービスを作成するために必要な知識をまとめた本。

カバーしている範囲が多岐に渡るので、取っ掛かり、リファレンスとしては役に立つかもしれない。情報が整理されて並べている反面、作者の主張や熱意を感じるタイプの本ではなく面白みに欠けるので読み物としてはあまりオススメできない。具体例についても軽く触れる程度なため、あまり印象に残らなかった。

「特定の研究成果を鵜呑みにせず、状況に合わせて適切に適用する必要がある」というもっともな正論でまとめられている項目も多く、未だ発展途上の分野であることを実感した。

ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術

ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術

  • 作者: ラファエル A.カルヴォ& ドリアン・ピーターズ,渡邊淳司,ドミニク・チェン,木村千里,北川智利,河邉隆寛,横坂拓巳,藤野正寛,村田藍子
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る

「怖い感じ」とは何か:『恐怖の哲学―ホラーで人間を読む』

「ホラー作品はなぜ娯楽として成立しているのか」など恐怖を主題とはしているが、それはあくまで具体例。

そもそも「感じ」や「情動」とは何で、どういう役割を果たしているのか、というもっと広い疑問を、生物学、脳科学を採り上げて解説していたため、ホラーそのものにほとんど興味がなくてもとても楽しめた。

ハードカバーで 2000 円強で売られていてもおかしくない内容だと思うが、新書で1000円程度。素晴らしい。

キーワード

中核的関係主題

それぞれの種類の情動の根底にある、自分と状況との関係的な利害をまとめたもの。

ソマティックマーカー仮説

情動的な身体的反応は、その反応を引き起こした対象の価値づけを反映したマーカーとして働く。その意味で、身体的反応は「ソマティックマーカー」と呼ばれる。

ソマティックマーカーは意思決定の際に、それが評価している価値づけに合致する選択肢を選ばせるバイアスとして働くため、自分にとって有利な意思決定を素早く行うにはソマティックマーカーが必要である、という仮説。

身体化された評価理論

情動を、中核的関係主題に対応するようにパターン化された身体的反応をレジスタすることで外的状況を評価する心的状態とみなす理論。

哲学的ゾンビと2種類の意識

意識の機能面に焦点を絞った意識の概念を「心理学的意識」(「怖いから逃げよう」などの出力に繋がる意識)、意識の感じの面に焦点化した意識の概念を「現象的意識」(怖いときに現れる、独特の感じ)と呼ぶ。

哲学的ゾンビは心理学的意識は持っているが現象的意識を持たない存在といえる。

AIR 理論:Attended intermediate-level representations

「注意の的となっている中間レベルの表象」。中間レベルの知覚の情報が、注意(脳内でどのように情報が流れるかを調節するプロセス)によってワーキングメモリに送られることにより意識体験が生み出されるとする理論。

小説感想:『ダンガンロンパ霧切 3・4』

密室十二宮編。まさか 3, 4巻でも終わらず 5巻に続くとは。

3巻

トリックの机上の空論っぽさがダントツ。いや、本当に上手くいくのかもしれないけれど、手間とリスクが大きすぎるというか、もっとシンプルでいいよねっていう。まぁキャラ物小説だからその辺りには期待していないにしても、あの犯人の追い詰め方はさすがにないんじゃないかなぁ…?あの状態になったら犯人は行動を起こさないと思うんだけど。

しかしキャラ物小説としてはトリプルゼロクラスの『安楽椅子伯爵』と『Ghost in the Mirror』の登場、ラスボス(?)である『変奏探偵』の暗躍など、相変わらずいい意味で癖の強いダンガンロンパっぽい「超」な感じのキャラクターが出てきていい感じ。

ダンガンロンパ霧切 3 (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ霧切 3 (星海社FICTIONS)

4巻

3巻で登場した探偵たちを仲間につけ、引き続き密室十二宮編。魚住絶姫さんへの言及があるとは思わなかった。トリックは前巻ほどの無理はない感じ。トンデモ物理 + 心理トリック。心理トリックの方は「密室十二宮」という状況を上手く使っていてなるほどと思った。

「犯罪被害者救済委員会」に対して、主人公たちも組織だって戦っていくことになるのかな?皆いいキャラしてるので、それぞれ上手く活躍しつつ一本にまとまるといいな。

ダンガンロンパ霧切 4 (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ霧切 4 (星海社FICTIONS)