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本やゲームの感想など

ゲーム感想:『アライアンス・アライブ』

プレイ時間30時間程でクリア。

アライアンス・アライブ

アライアンス・アライブ

よく練り込まれた世界設定が、メインのストーリーとは離れて小さなイベントや会話に散りばめられていて、考察好きにはたまらなそうなゲームでした。逆に言えばメインのストーリーを追っただけでは「あれって何だったんだ?」という疑問が山のように残ったので、じっくり2周目をプレイする時間がない身にはちょっと辛いです。

パーティーの先頭に置いたメンバーによって NPC との会話が変わる、仲間に入れることが必須ではないメンバーも、仲間にした後はしっかりイベント会話に参加するなど、とても丁寧に作り込まれています。

その他、世界設定やストーリー以外のシステム的に気になった点は以下。

選択を迫るシステム

ストーリーは一本道であるものの、取捨択一が迫られる箇所は多く、今時のゲームでは珍しく取り返しが付かない要素が多いです(「強くてニューゲーム」でカバーできる分もなくなないですが)。

  • 武器・ポジションごとにレベルやスキルがあるので、一度決めた役割を変更するのは厳しい(時間をかければできないわけではない)
  • ギルドを育てるために必要なギルド員のメンバー数は、全ギルドを最大レベルまで育てるには全然足りず、後で配属先変更もできないので、どれを育てるか選ぶ必要がある(適当に配属させた後でそれを知る…)
  • 1度建てたギルドタワーは建て替え(種類の変更)ができない
  • 集めるとアイテムと交換できる結晶の数は、交換できるアイテムを全て取得できる数よりも少ない
  • 敵を倒してアイテムを取得する or 敵を見逃してギルド員にする、が選べる
  • お金を払ってダンジョンギミックを解決する or 自力で解く、が選べる
  • お金を払って情報を貰う or かわりにアイテム集めのお使いに行く、が選べる

などなど。

敵を見逃せる、お金で解決できる、などは、プレイヤーの選択がしっかりとゲームに繁栄されて良いな、と思います。

成長要素と戦闘システム

上でも少し触れたものの、武器・ポジションごとに成長要素があるなど、結構独特なシステムです。なので考えられることはいろいろあるものの、実際のところは、かなり序盤に多くの人が辿り着くであろう、一人ガード役、一人サポート(回復)、残りアタッカーの組み合わせが極めて万能で、他の戦略を試す必要性はあまりありませんでした。ターン毎にポジションを変えられる、という特徴的な要素も、一回も必要になりませんでした。

また、成長要素と戦略が密に結びついていて、武器やポジションを変更すると別途レベル上げが必要になるというのも、「今の武器・ポジションでは勝てなかったから(もしくは物足りないから)違う戦略を試してみよう」という方針転換に踏み出しにくく戦略が固定化する要因だったかと思います。

誰でもクリアできるようにする必要があるので、万能の策があるのは致し方ない気もしますが、折角のシステムがあまり機能していなかった印象を受けたので、難しいところですね。

自動戦闘の AI のしょぼさ(そもそも AI と呼べるようなものではなく直前行動の繰り返しで、回復術に至ってはターゲットが術者固定)、後半は防具が揃うと、ほとんどダメージは受けないにもかかわらず敵を倒すにはターン数がそれなりにかかる(4倍速でも)、ファイナルストライク(強力な攻撃ができるが武器が一時的に壊れる)の運用の面倒臭さ(貧乏性なので、中盤のイベントボス戦で連発した以外ほぼ使用せず…)などもあり、個人的には戦闘システムは「可」くらいの印象です。


3DSの2頭身3Dグラフィクスが許せ、考察が好き、という方にオススメ。

ビッグデータ入門以前:『ビッグデータを支える技術』

Hadoop, Spark, MapReduce, Amazon Reshift など、キーワードとしては聞いたことがあるものの、それぞれがどういうもので、ビッグデータを処理するシステム全体としてどこに位置するかはよくわかっていない、それくらいの前提知識で読み始めましたが、ちょうど良い感じでした。

ビッグデータを支える技術―刻々とデータが脈打つ自動化の世界 (WEB+DB PRESS plus)

ビッグデータを支える技術―刻々とデータが脈打つ自動化の世界 (WEB+DB PRESS plus)

データの可視化を例に、データを集める箇所、リアルタイムに処理する箇所、定期的に処理する箇所などをデータがどのように流れ、各箇所ではどのような事に気をつけて設計されているかを学ぶことができました。

実際にこれから何かしようという訳ではなかったので、各種システム上の具体的なスクリプトスニペット的な短いもの)や、実際に環境を整えて手を動す箇所は今回は流し読みです。何かやってみたいとは思いつつ、特に分析したいことも今はありませんし、何か見つかったとしてもスモールデータを処理するフレームワークで事足りるだろうなぁ、と。

本当にビッグデータが必要なのか、実は少数サンプルからの具体例で多くの場合は十分な知見が得られるのではないか、と思うことがなくはないのですが、とりあえずデータを取っておいて後で何か見れるようにしておく、というのは後で仮説を検証するためという点でも有意義です。これからもどんどん技術発達が進み、データ収集・分析のコストが下がり続けて、いろいろなデータが気軽に収集、公開、活用できるようになるといいですね。

小説感想:『パーフェクトフレンド』

野崎まど著。『2』よりも先に読むべきだったという本の一冊。

秀才「理桜」と天才「さなか」、2人の小学生のやりとりを通して友達とは何か、について語られる友情物語(?)。

紹介文に「異色ミステリ」とありましたが、これをミステリと呼ぶのかどうか。結末は不思議系で、むしろファンタジーよりです。あまりスッキリとはしません。若干不穏さすら感じるのは、先に『2』を読んでしまっているからなのかどうか。まぁ、やはり発売順に読むべきだったのでしょう。

地の文のテンションの高さ、叙述的なネタに戸惑う部分はあるものも、全体的に読みやすい、というのは相変わらず。

小説感想:『エデン』

ロードレースに少しのミステリ要素を併せた『サクリファイス』シリーズ。

エデン(新潮文庫)

エデン(新潮文庫)

スティグマータ』からあまり時間をおかずに読んだこともあって、全体の流れも細かな描写もある程度パターン化している、ということを強めに感じて少し新鮮味がありませんでしたが、それでもそれなりに楽しめました(ちなみにこちらの方が『スティグマータ』よりも前)。

ミステリっぽい部分は一応ある程度の伏線は序盤から張っていますが、事件の勃発も解決もかなり後半に急に来るので、良く言えばレース部分の描写の邪魔にならないです。悪く(?)言えば、ミステリ部分がなくても、少なくともそれほど大きな事件がなくともいいスポーツ小説になるんじゃないか、という気がするので、一度スッキリと最後までレースを描いてみてほしいなと思います。

人類は神になる:『Homo Deus』

サピエンス全史で有名な著者による、未来の人類の展望。

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

戦争や飢餓といった問題を(基本的に)解決した人類がこの先目指すのは「不死(immortality)」、「至福(bliss)」、「力(divinity)」(divinity は本来「神々しさ」とかそういう意味ですが、この本の文脈では「神のような力」的な意味で、要するに自分の能力を含めて全てを自在に操る科学力的なものを指してます)である、として、それがなぜなのか、そのことが社会に及ぼす影響を思索している本。

本書を読んだのは 1ヶ月程前で細かいことはあまり覚えていないのですが、読みやすく、なかなか面白かったです。

  • 宗教を捨てて科学に傾倒した人類は、人類そのもものを(他の動物とは違って)価値のある存在だとするヒューマニズムという思想によって(宗教を捨てたことによって失われた)「人生の意味」を守ろうとしてきたが、技術のこれ以上の発達はそれを脅かす(人類以上の知性が作成される、人間の脳が高度なアルゴリズムに過ぎないことが露呈する、など)
  • 物理的なリソースの価値が知識に対して相対的に低下したことによって兵士や消費者としての価値を失った大衆が、AI の発達と仕事の専門家によって労働者としての価値も失っている
  • 情報量が爆発的に増加した結果、現代の政治・政治家は未来のビジョンを持てず、国を導くのではなく国を管理するので精一杯である

など、一般人からしてみれば明るくない見通しもありますが、そういうのも含めて未来がどうなるのかを想像するのは楽しいですね。自分が生きている間にはそこまでの劇的な変化はないだろう、と思って他人事のように気楽に考えていますけど。

一方で、あと 50年か 100年くらい遅く生まれていたら世界がどこまでいくのを見られたのだろう、と考えると、それはそれでちょっと悔しい気もします。まぁ、それは不死が実現するまで、どんな時代に生まれようとその気持ちは変わらないのでしょう。