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人類は神になる:『Homo Deus』

サピエンス全史で有名な著者による、未来の人類の展望。

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

戦争や飢餓といった問題を(基本的に)解決した人類がこの先目指すのは「不死(immortality)」、「至福(bliss)」、「力(divinity)」(divinity は本来「神々しさ」とかそういう意味ですが、この本の文脈では「神のような力」的な意味で、要するに自分の能力を含めて全てを自在に操る科学力的なものを指してます)である、として、それがなぜなのか、そのことが社会に及ぼす影響を思索している本。

本書を読んだのは 1ヶ月程前で細かいことはあまり覚えていないのですが、読みやすく、なかなか面白かったです。

  • 宗教を捨てて科学に傾倒した人類は、人類そのもものを(他の動物とは違って)価値のある存在だとするヒューマニズムという思想によって(宗教を捨てたことによって失われた)「人生の意味」を守ろうとしてきたが、技術のこれ以上の発達はそれを脅かす(人類以上の知性が作成される、人間の脳が高度なアルゴリズムに過ぎないことが露呈する、など)
  • 物理的なリソースの価値が知識に対して相対的に低下したことによって兵士や消費者としての価値を失った大衆が、AI の発達と仕事の専門家によって労働者としての価値も失っている
  • 情報量が爆発的に増加した結果、現代の政治・政治家は未来のビジョンを持てず、国を導くのではなく国を管理するので精一杯である

など、一般人からしてみれば明るくない見通しもありますが、そういうのも含めて未来がどうなるのかを想像するのは楽しいですね。自分が生きている間にはそこまでの劇的な変化はないだろう、と思って他人事のように気楽に考えていますけど。

一方で、あと 50年か 100年くらい遅く生まれていたら世界がどこまでいくのを見られたのだろう、と考えると、それはそれでちょっと悔しい気もします。まぁ、それは不死が実現するまで、どんな時代に生まれようとその気持ちは変わらないのでしょう。