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健康の尺度:『The Telomere Effect: A Revolutionary Approach to Living Younger, Healthier, Longer』

一般的な健康指南に「テロメアの長さ」という指標が根拠として加えられた本です。

The Telomere Effect: A Revolutionary Approach to Living Younger, Healthier, Longer (English Edition)

The Telomere Effect: A Revolutionary Approach to Living Younger, Healthier, Longer (English Edition)

日本語版:『細胞から若返る! テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム

内容は多方面で包括的のため、根拠のある健康アドバイス集としては悪くないものの、個人的にはちょっと微妙、という感想です。

運動や思考法、環境が人の健康さ・寿命に与える影響を「テロメアの長さ」という統一的な指標で測れるようになった、ということは確かに興味深いのですが、いかんせん個人では測定や実感が難しいマイクロスケールの話であるため、いまいちその知識が上手くモチベーションに繋がりませんでした。

本書が掲げるアドバイスも「健康的な食事をしましょう」や「定期的に運動をしましょう」といった至極当たり前のもので、目新しさはありません。それらのアドバイスの有益さはテロメアの長さへの影響を抜きにして、もっとマクロなレベルで語れるでしょうし、その方が生活への影響として実感しやすいのではと思います。

そのテロメアについても、常識的な基礎知識が最初に少し記載されている以外は、結果として「伸びた」、「縮んだ」(もしくは「長かった」、「短かった」)以上の情報があまりないため、科学方面の読み物としても物足りない感じです。

テロメアの長さの測定がもっと一般的になっていて、自分の値と本書の研究で出てきた値とで数値的な比較ができるようになっていたら、また違った印象を受けたかもしれません。細胞生物学は研究的にはとても面白く、応用研究の影響力も大きい分野だと思うので、今後の発展が楽しみです。