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小説感想:『すべての見えない光』

プロット、構成、文体、どれも非常に優れた素晴らしい小説でした。

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

戦時下で交錯する無線技士の少年と盲目の少女の運命を描いた物語、ということで決して明るい話ではありませんが、安易なお涙頂戴ものとも全く異なり、詩的で美しいです。

それを語る文体も描写がとても豊かで、人物や街の様子、心の内がリアルに想像できました。

構成として特徴的なのは、

  • 冒頭で、運命の日となるサン・マロ爆撃当日の開始を描いた後、章ごとにその日とそこに至るまでの過去を交互に書く
  • 各章も主要人物それぞれの小さなエピソードを代わる代わる積み重ねることで組み立てられている

というスタイルですが、前者にはどこがどう繋がるんだろう?という興味をそそられ、後者からは全てに意味があり無駄がない、という印象を受けました。後者の方は単純に区切りが多く短い隙間時間でも読みやすい、集中力を保ちやすいという点でも良かったです。