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読書メモ:『アルジャーノンに花束を』

精神障害を持つ男性が、脳外科手術によって常人を遙かに超える知能を得るも、その後段々とその知能を失い最後には元の状態に戻るまでの軌跡を、その男性の経過報告(手記)という形で書かれた小説。

アルジャーノンに花束を〔新版〕

アルジャーノンに花束を〔新版〕

噂に違わぬ名著でした。

知識への憧れと渇望、短期間で急激に知能を得たことによる精神面の不釣合い、周りの人間への態度の変化、そして一度手にした知能を失う恐怖のリアリティ。

ほとんどひらがなで誤字が多かった文章が、段々と漢字や難解な用語、複雑な言い回しが増え、しかし終いにはまた以前のひらがな中心の文に戻る小説の形式。

「名著」として期待して読むと、「面白いけど…」くらいで終わることも多いのですが、これは間違いなく読んで良かったです。小説として面白く、かつメッセージ性もとても高いのでただの娯楽作品としては終わりません。

高まった知能の中で多くを学び、「知能が全てではない」と悟った主人公の、それでも「前の自分には戻りたくない、読み書きができるままでいたい…」という祈りが胸を打ちます。読み書きができる、何かを学べるということはなんと素晴らしいことか、というのを実感しますね。

欲を言えば高校生くらいの時に読みたかったですが、とにかく読んで良かったです。

実際に知能・性格などをテクノロジーで強化・矯正できる具体的な可能性が見え始めている今、この小説を読む意味は高まっているのではないかと思います。