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政府 × 行動経済学:『Inside the Nudge Unit: How small changes can make a big difference』

Inside the Nudge Unit: How small changes can make a big difference

Inside the Nudge Unit: How small changes can make a big difference

ポイント

人に何か行動を促したい時は以下の EAST 原則を意識する。

項目 要約
Easy 簡単にする。人は簡単で面倒でないことならする可能性が高い。行わなければならないことは出来る限り単純化し、障害を減らす。選択ならデフォルトが一番良いものにする。
Attract 注意をひきつけ魅力的にする。受けての名前を出すなどのパーソナライズや、重要なポイント・受け手にとってのメリットの強調する。専門家の名前を出すなどして信頼できるものにする。
Social 社交性を利用する。人は他の人の行動を強く参考にする。他の人が既にやっているということを知らせる。他人の目を意識させる。
Timely 適切なタイミングで知らせる。(悪い)習慣が固まる前に介入する。

感想

イギリスの Behavior Insight Team が政府としてどのように行動経済学を活用して、税金の回収率を上げる、再就職率を上げる、より効果的な教育方法を探す、といった活動を行ったかということを、その当事者が書いた本。

具体的な事例が多く、また「正しく公正であること」が期待される政府としてそのような活動を行うことの難しさなども書かれており、理論や研究室内では終わらない実世界の話を知ることができました。

他にもヘルメットの着用を義務化したら自転車の盗難が減った*1ことや、ガスの種類が変わったことで自殺数が減った*2など面白い話もあり、コストパフォーマンスは良い本だったと思います。

*1:盗む側が事前にヘルメットを用意しておかないと、盗んだ自転車にヘルメットなしで乗っていたら止められて捕まる可能性があるため

*2:中毒死しにくいガスになった。命のような重大な問題においても、多くのケースでは「ガスがダメなら他の手段で…」とはならず、手段の用意が面倒になれば自殺を止める方向にいくらしい