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小説感想:『ソラリス』

「意思を持った海」と人類の接触を巡る物語。

人類の理解を超越した「意志を持った海」を相手取ったファースト・コンタクトもの、という面白い設定の SF でした。

知性を持った地球外生命体との接触を扱う物語では何かしらの意思疎通の手段があることが多いですが、本書の「意志を持った海」とは最後まで全く意思疎通が叶いません。そもそもその意志の存在すらも、地球人の存在に対して何かしら反応を示す、という事実からしか推察できないほどです。

その海の反応の一貫として現れる、登場人物の記憶から生み出された「幽霊」を軸に話は展開し、人間とは何か、擬人化を全く許さない存在と人類は分かり合えるのか(そもそも分かり合うとは何だ)といった問いかけが投げられます。

地の文の情景描写の重厚さなどは少し読むのが大変でしたし、手に汗握るような展開も心が晴れるようなハッピーエンドもありませんが、考えさせられる内容で退屈しませんでした(ちょっと地の文を飛ばしたりはしましたが…)。

ちなみに手に取るまでは聞いたこともなかったのですが、原著は 1961 年初版で、結構有名な本のようです。