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変化すらも変化する:『9プリンシプルズ』

MIT メディアラボの伊藤穰一氏とジェフ・ハウ氏の著。

加速度的に変化の速度が上がる、複雑で不確実な世界における 9 つの原則が語られていました。

権威より創発

インターネットによるコミュニケーションコストの低下によって、多くの分野をまたがった人同士の多様な協力が可能になり、少人数のトップダウン的な決定よりも、大人数のボトムアップ創発の力が増す。

プッシュよりプル

必要な人が必要な時に必要な情報を取得できるシステムの方が、誰かが情報を管理して適切と思われる人に送るシステムよりも優れている。

地図よりコンパス

周りや未来を地図をかけるほど正確に調べることは高コストないしは不可能。未知のできごとにいずれ当たる、という前提で指針を作り、地図を作り始める前に行動に移すべき。

安全よりリスク

安全などはなく、失敗するリスクを受け入れる必要がある。

従うより不服従

言われたことをやっただけでノーベル賞を獲れた人はいない。ルールに盲目的に服従するのではなく、ルールを疑問視しなければならない。

理論より実践

理論から実践への一方向的な流れではなく、具体的な社会上・生活上の問題に実際に取り組むことで生まれる実践から理論への流れも重要になる。

能力より多様性

一分野に優れた人を少人数集めるよりも、多様な人々を巻き込んだ方が問題解決の勝率が高い。

強さより回復力

絶対に突破されない防御壁は作れない。

モノよりシステム

モノ単体ではなく、そのモノが作用するコミュニティを含めてシステム全体への影響を考えなければならない。


原則1つにつき1つの章が割り当てられていますが、その中で繰り広げられる具体例が直接的にわかりやすくその章のタイトルと結びついているかというとそうではなく、全体を通して 9つの原則が導こうとしている、という印象です。

この章と例の結びつきの低さに、全体的な文章のわかりにくさ(若干不自然さを感じたので、翻訳文が微妙な気もします)も相まって、期待したほどの納得感・感銘は受けられませんでしたが、9つの原則自体は妥当性のあるものだと思います。