イノベーションではない:『イノベーション・オブ・ライフ』
『イノベーションのジレンマ』などの著書を持つ、ハーバード・ビジネス・スクールの教授の人生訓に関する本。
その有名な書籍にちなんでの邦題だと思うのですが、さすがに内容と関係なさすぎるでは…。『イノベーション・オブ・ライフ』をあえてさらに訳すと「人生の革新」になりますが、「革新」って感じは全然ないです。
原著のタイトルは『How Will You Measure Your Life?』。直訳的には「人生をどう測るか」。
このタイトルからは多少なりとも定量的な話が出てくることを期待していたのですが、「Mesaure」については「自分の人生の目的・指針を深く考え、それによって人生を測るべき」という質的な言及に留まるものでした。やはり万人に当てはめられる人生の指標の測定方法などは(そもそもその指標自体が各自でバラバラなのでプロセスとしても)明示できない、ということでしょう。
ビジネスの理論を人生に応用する、という形式で話が進められます。大筋自体に特に目新しさを感じる部分はありませんでしたが、以下の言葉は具体性がありイメージしやすく、良いと思いました。
- 金銭などの外的な報酬は「衛生要因」であり「動機づけ要因」にはならない。衛生要因を整えれば仕事の不満を減らせるが、「仕事に不満がある」の反対は「仕事に満足している」ではなく「仕事に不満がない」である。それだけで仕事を好きにはなれない。
- 最低限満たさなければ病気になるが、ある程度以上にしても健康を増進はしない、ということから名付けられた「衛生要因」という名前がわかりやすいです。
- 目的のために製品・サービスを利用して「用事を片付ける」という考え方は人間関係にも当てはめられる(もちろん「用事」は物理的なタスクだけではない)。家族、友人、同僚は自分に何を片付けて欲しいのだろうか?と自問しよう(そして実際に片付けよう)。
- 「用事」という具体的な問題を想起させる用語が良いです。
逆に後半に出てくる「限界費用」、「限界利益」という概念は私には馴染みがなかったのでわかりずらかったです。会計関連の知識があるとスッと腑に落ちるのかもしれません。
イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
- 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: 単行本
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