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小説感想:『高い城の男』

第二次世界大戦でドイツや日本を筆頭とした枢軸国が勝利し、その後の社会を支配しているという仮想世界を描いた小説、『高い城の男』を読みました。

有名な作品でレビューの評価も高いのですが、うーん…、個人的には微妙でした。

振り返ってみて自分に合わなかった点として挙げられるのは以下の3点です。

まず1点目は、登場人物毎に並行して進められていたストーリーが最後までほとんど直接的な関係がなく終わってしまったところ。「この微妙な重なり具合こそが良いのだ」という人もいそうだな、とは思うのですが、どうやら自分はもっとわかりやすく劇的な邂逅を無意識に期待していたようです。読み終わったときに「あれ、これで終わり?」と思ってしまいました。

2点目は作中で登場人物達が使用する「易経」という占いに関して、「そういうものだ」と納得しきれなかったところ。フィクションとして割り切ればよい話ではあるのですが、例え枢軸国が勝利し、日本(中国)的な文化がアメリカを席捲した世界であったとしても、そのような占いに頼る人々がいる(しかも日本人以外に)、というところには違和感を感じざるをえませんでした。最終的に「易経」が『イナゴ身重く横たわる』を書いた、という点についても?????でした。

3点目は、ジュリアナの性格設定がよくわからなかったところ。これは本当によくわからなかった、としか書きようがないのですが、よくわからなかった故に魅力や人間味を感じられず、彼女のパートはあまり楽しめませんでした。

4点目は、ドイツの政治体制を筆頭に全体的に情勢が複雑で、「こいつは何者で、誰の味方なんだっけ?」と思うことが度々ありました。


…要するに「自分には難しかった、もっと気軽に楽しみたかった」のかもしれません(すごく頭が悪そうな感想だ…)。

物に宿る史実性の話や、作中で連合国が勝利したという設定のフィクション小説が登場する点など、面白いと思う設定や文章もところどころにあり、好きな人は好きそうだな、とは感じました。

あまり長くはない小説なので、気になる方は実際に手にとって読んでいただければと思います。