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実は身近な量子の世界 :『量子力学で生命の謎を解く』

読書 科学

原題は『Life on the Edge』というのですが、カッコいいタイトルですね!私たち生命は古典物理学量子力学との堺を跨いで維持されている、という主題にも合っていてとてもクールです。
(邦題のシンプルなわかりやすさも、これはこれでとても好印象です。)

で、中身はというと、古典物理学的な原子や分子の形、運動では説明のつかない生命活動の謎を量子力学な視点で解明していく本です。

量子力学の基本的な原理から説明されているので、前提知識は必要ありません。現象としてイメージしにくい量子力学は少し縁遠く感じてしまい(「応用物理の問題であって自分には全然関係ないのでは?量子コンピューターみたいなものを作る研究者だけのものでしょ?」)最近はあまり手を出していなかったのですが、本書では生命活動や人間の意識、生命の誕生といった身近な話題が多く扱われていたので、最後まで興味深く読めました。

まだ証明はされていない、今後の更なる検証が必要とされている研究や仮説も多く紹介されています。この点は、本に「今後も覆ることのないのない決定版の知識」を期待されている方にはちょっと先走っているように映るかもしれませんが、それも含めて、今後の生物学における量子力学の役割やその応用の可能性を大いに感じられ、この分野への興味をそそる良本だと思います。

量子力学で生命の謎を解く

量子力学で生命の謎を解く

以下、生命と量子力学の関係のちょっとしたメモ。

物理的現実の3つのレベル

  1. 列車や植物といった日常的な現象を記述するニュートン力学のレベル
  2. 液体や気体の振る舞いを記述する熱力学のレベル
  3. 個々の原子や分子の振る舞いを記述する量子力学のレベル

なぜ生命活動の解明に量子力学が必要なのか

  1. 古典物理学は基本的に統計的な規則に基いた「無秩序から秩序」を生み出すものである
    • 熱力学は多数の分子の「平均」速度に支えられているが、各分子の速度や動く方向はランダムである
  2. つまりそのような法則に正しく従う系は多数の粒子を必要とする
  3. 微小な生物学的仕掛けの一部は、あまりに小さく古典的な法則に支配されない
    • 例えば遺伝が統計的な法則に基いている場合、その変異率は計算してみると 1/1000 程度になるはずだが、実際は 1/1000000000 (10億) 未満であることが知られている

シュレーディンガーの『生命とは何か』による説)