プラシーボだっていいじゃない:『「病は気から」を科学する』
- 作者: ジョー・マーチャント
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/04/13
- メディア: Kindle版
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ポイント
- プラシーボであっても治療効果・鎮痛効果があるのであればそれは有用で、利用価値がある。
- プラシーボでは、実際に脳内からエンドルフィン(鎮痛作用のある化学物質)が産生されるなど、実体的な体への効用がある。つまり、プラシーボは完全に気のせいというわけではなく、体の何らかのメカニズムを稼働させることによって効果を発揮している。
- 悪性の効果を示すプラシーボ(ノセボ効果)も同じように実際に体に何かが起きていると言える。一部のプラシーボはノセボによる「必要以上の痛み」を緩和することで作用している可能性がある。
- 患者に「これはプラシーボ薬です」と伝えて化学的な効果のない薬を投与してもプラシーボの効果を維持することができるため、「患者を騙している」という倫理に対する批判をかわす手段はある。
- どのプラシーボが何に作用するかは、文化や個人によって異なる。
感想
「代替医療にはプラシーボ以上の効果はない」*1という批判に対して「プラシーボであろうと効果があるならいいじゃない?」という方向性で、プラシーボや催眠術、瞑想などによる「心」への働きかけが「体」にどう作用するかについての研究をまとめた面白い本。
本を読む前は「ホメオパシー?バカじゃないの?」という考えだったものの、読み終わってみると「バカにできたものじゃないな(まぁ自分では手は出さないけど...)」と考えが変わりました。その人が望んだ効果が得られるのであれば、手段について他人がとやかく言うことではありませんね。
プラシーボが「なぜ・どのようにして効果があるのか」については、まだそこまで科学的なメカニズムの解明は進んでいないようであるものの、「効果があるようだ」という研究(実験)結果は想像していた以上に出ているようでした。
一般に誤解や誇張がなく受け入れられて、ケアや治療の一貫に組み込まれていくためのハードルは高そうですが、上手く活用できれば社会的なメリットは大きそうなので、研究が進むと良いなと思います。
*1:ちなみに「代替医療の効果(はない)」という話については『代替医療解剖(新潮文庫)』が面白かったです。
プロジェクトの成功・失敗を予見する:『アドレナリンジャンキー』
アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン
- 作者: トムデマルコ,ピーターフルシュカ,ティムリスター,スティーブマクメナミン,ジェームズロバートソン,スザンヌロバートソン
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/10/11
- メディア: Kindle版
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エンジニアリングを主とするプロジェクトで見られる、良いパターン・悪いパターンを各1~4ページくらいで説明した本。各項目が短くまとまっていて読みやすいです。
適切な切迫感を持って誰が何をいつまでにするかを明らかにすること、評論家・批評家にならずプロジェクトの成否を自分の成否を同一視すること、プロジェクトを正しく把握するだけでなく正しく動かす努力をすること、などが自分には刺さりました。
特に切迫感に関しては、期限が長いタスクではどうしても保てなくなることがあるので、上手く定期的に締め切りなどを設けて意識できるようにしたいところ。
これは仕事のみならず、プライベートでの目標でもそうなので、来年に向けて気をつけたいです。
小説感想:『ここから先は何もない』
小惑星探査機が採取してきたサンプルに含まれていた、人骨化石を巡って繰り広げられる長編 SF。
- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2017/07/21
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設定・結末に面白みを感じる部分はあったものの、登場人物があまり魅力的に感じられなかったことと、トリックの種明かしや天才級ハッカーという設定の主人公が出来ることの都合の良さにあまり納得がいかなかったこともあって、小説全体としては「まぁまぁ普通に面白かった」という感想です。
Amazon 上でのレビューでも書かれていますが、誤植が多いのも全体の印象を下げていて勿体無いですね。
著者の後書きによると
『星を継ぐもの』という作品に、ある不満を持っています。その不満を解消するために、わが身の非力もかえりみずにこの作品に手を染めました。
とのこと。実際どんな不満だったのか、は推して知るべし、ということなのか、書かれていないです。
「星を継ぐもの」の良さは、壮大な SF 設定に、わかりやすく「謎解き」という道筋があって、それでいて登場人物に魅力があったことにもあると思うのですが、それと比べてしまうと本作品の登場人物の魅力の無さはより気になるところ。エンタメ小説として面白さを狙ったというよりは、思考実験に物語を載せた、というような形なのかもしれません。
正しいお金の使い方について:「幸せをお金で買う」5つの授業
何かの動画で同じような話題について見たことはあったのですが、そろそろ来年の目標なり計画なりを決める時期なので、せっかくなので何かの参考にと読んでみました。
- 作者: エリザベス・ダン,マイケル・ノートン,古川奈々子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 中経出版
- 発売日: 2014/02/22
- メディア: Kindle版
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以下は本書を読んでの自分の生活の振り返りなので、全く一般性はないです。
経験を買う
これはよく言われること。
自分の支出の対象はほとんど本やゲームなので、経験をするためのモノ、という意味ではこれらにお金を払うのに問題はなさそう。購入して後悔したことも、あまりない。
ガジェット類は微妙なところ。Google Home や Kindle は「経験のため」とは言い難いものの、毎日使っているし、満足度は高い。これらは幸福のためというよりは快適さのため、かな。
後は思い出になる「特別な経験」と言えるような支出もたまにはした方がいいのかもしれない。今パッと思いつくのは以下の辺り。今度時間をとって考えてみよう。
- ゲーム音楽のコンサートを見に行く
- サーカス・大道系のようなものを見に行く
- キツネ村に行く
- どこかの山に登る
- 鍾乳洞(でもなんでもいいけど、洞窟的なとこ)を見に行く
- 温泉に行く
ご褒美にする
同じ買い物でも、心の持ちようや、頻度によって幸福への貢献度が変わる、というもの。
例えば、チョコレートは毎日食べるよりも週に1回にしたほうが喜びが大きくなるし、ゲームは一気にぶっ続けでプレイするよりも、時間を置いて少しずつ進めたほうが楽しみが大きくなる(+楽しめる期間も長くなる)。
とりあえずゲームを一気にプレイしてしまうことがないように気をつけよう。
あとは、ストレスが溜まった時には「食べないとやってられない」というようなネガティブな思考からではなく「ストレスに耐えた自分へのご褒美」というポジティブな思考でお菓子を食べることにしよう(食べてる時点で耐えてはいない気もするけど)。
時間を買う
時間があると感じると人生の満足度は上がる。
ルンバを買うかなぁ。。。家の構成的にあまり効果がなさそうなところが悩みどころ。上手く時間をお金で買う選択肢を見つけたい。
また、他人のために時間を費やすことには、自分の時間に余裕があると感じられる効果があるとのこと(後述の「他人に投資する」にも繋がる)。
自分のややこしい仕事からの逃避のために他人の簡単な仕事を手伝って自分の仕事を止めてしまうということがないよう、できれば他人のややこしい仕事にも貢献できるように気をつけつつ、これも意識したい(しかしこれは「幸せでお金を買う」ではないような)。
先に払って、あとで消費する
この趣旨は、消費を先送りすることで「消費を楽しみにする期間」を設けられる、ということ。祭りは準備期間が楽しい、旅行は行く前が楽しい、と同じ理論。
つまり、いつか後で消費するからといっても、積ん読や Steam セール時のゲームの買いだめなど、いつ消費するかわからないものでは効果はなさそう。
「経験を買う」や「ご褒美にする」をより効果的にする方法の1つとして覚えておくことにする。
他人に投資する
自分にあまり関係性が見いだせないところに直接的に寄付することには心が惹かれないので、好きなものには積極的にお金を使って、作者・関係者に届くことを祈る、かな。
自分の興味のある大義を探して寄付する、ということも一応検討してみよう。
「創造性とは試行錯誤の結果なんだ」:『クリエイティブ・マインドセット』
デザイン会社のIDEO の創業者の兄弟による、創造力を養い発揮するためのアドバイス。
クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法
- 作者: デイヴィッド・ケリー,トム・ケリー,千葉敏生
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/06/20
- メディア: 単行本
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原著タイトルは「Creative Confidence : Unleash the Creative Power Within Us All」。内容も、誰でも本当は Creative なんだ!という励ましのメッセージに溢れていて、ポジティブな気持ちになれました。実践的なアドバイスもいろいろあったので、改めて参考にし、自分の中の無力感を打ち消す助けにしたいと思います。
以下は、いつかこの記事を自分で見直した時に思い出したい、印象に残った項目のまとめです(胡散臭い人が話しかけているような文体になっていますが、本書の文体がこんな感じというわけではないです)。
創造性とは
「創造性とは常に結果論だということを学びました。問題を解決するたったひとつの名案をずばっと思いつくのが創造性ではありません。何百回と試行錯誤を繰り返した末に最良の解決策にたどり着くのが創造性なんです」
ということで、どんどんチャレンジして、どんどん失敗しよう。勝率100%の1勝よりも、勝率1%の2勝の方がすごいんだ。
「今日中に何とかする」
何か困ったこと・改善したいことが見つかったら「今日中に何とかできないか」と考えてみよう。理想的な解決策とは程遠いかもしれないけれど、「今日中に何とかできるかも」くらいのステップであれば、実際に行動に移せる可能性はぐっと高まる。
「先延ばし」とは戦えない、「抵抗」となら戦える
「先延ばし」という現象そのものや「先延ばししてしまう性格」といった抽象的なものに対して具体的なアクションをとることは難しい(自分の「意志の力」なんてあてにしてはいけないってことくらい、もう学んだでしょう?)。
でも、「先延ばし」の原因となっているもの、すなわち「抵抗」を明らかにすることができれば、それらはひとつひとつ対処できる。例えば...
- 上手にやらないと、という不安
- とにかくハードルを下げよう。「何かする」は、不完全さを恐れて「何もしない」よりも遥かによい。
- インターネットサーフィンをついついしてしまう
- 準備が億劫だ
- とにかく簡単に始められるようにしよう。例えばパソコンでの何かをするのであれば、自動でそのためのソフトを開くようにしよう。
- それでもついついサボってしまう
- 家族や友人に「自分はこれをやる。やってなかったら罰金をとっていいから指摘してださい!」と宣言しよう(自分の意志の力がだめなら、他の人の意志の力に頼るんだ)。
1日に点数を付けよう
クリエイティビティを最も発揮できる領域は、自分が楽しめる領域、得意な領域だ。では、自分が楽しめる領域って何だろう?自分は何に満足感や充実感を得ているんだろうか?自分のことは、わかるようで、よくわからない。ならばデータに頼ろうではないか。「失敗のレジュメ」や、「バグリスト」の種も含めて、毎日以下のことを記録してみよう。
- 何をした?どう感じた?
- 最高の気分だった出来事は?
- 最低の気分だった出来事は?
- 今日をもっと良くするにはどうしたらよかっただろうか?
- 何か不満に思ったこと、改善したいと思ったことは?