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本やゲームの感想など

小説感想:『ハイペリオンの没落』

英国SF協会賞/ローカス賞受賞。『ハイペリオン』の続編(というより、後編)。

ハイペリオン』に引き続きこちらも超大作で、上下巻それぞれ 500ページ程。『ハイペリオン』と合わせれば脅威の約 2000ページ!

それでいて引き伸ばされた感覚が全くない、密度の濃い物語になっているのが凄いですね。基本的に「嫌な奴」が登場せず、巡礼はもちろん、それ以外のキャラクターもきちんと活躍している、ないしは役割を果たしているという点も良いです。

強いて難点を言えば「雲門」(本書に登場する超 AI のひとつ)の喋り方(?)が禅問答(?)のような形式になっていて何言ってるのかわかりにくい、ものによってはさっぱりわからない(後で自分で少し分かりやすい要約をしてくれたり、聞き手が解説してくれたりはする)ことくらいでしょうか。

これで一端物語にはある程度の区切りはつきますが、ここまできたら、ということで次は 300年後の世界らしい『エンディミオン』に進みます。

小説感想:『ハイペリオン』

ヒューゴー賞ローカス賞星雲賞を受賞した長編小説。

400ページ × 2 でまだ終わらんのか!というかメインイベントは始まってすらいない!

続編があることは知っていましたが、まさかここまで中途半端な形で『ハイペリオン』は終わりとは。。。

若干昔の作品なので単語の古さ(特殊な語が多いので古さは関係ないかも?)や情景描写の重さには若干の読みにくさを感じましたが、物語の面白さはさすがに評判通りで、いろいろな要素が詰まっていました。これだけでも面白い、しかしここまで読んでしまうと続きも読まざるを得ない、そんな感じで読み始めるには覚悟のいる作品です。

読んでしまった以上、おとなしく『(ハイペリオンの没落)http://amzn.to/2yoh4Ze』に進みます。

眠りたい:『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』

良く眠るためのアドバイス集。

SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術

SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術

最近、明らかに睡眠パターンが乱れていて辛い状態だったので、何かできることはないかと思い読んでみました。

「運動」や「食事」といったポイントごとに短くまとめられていて読みやすく、アドバイスも具体的で、いくつかは採り入れることができそうです。

最後に言及されていた「アーシング」(地面に肌を触れさせることで自由電子が地面から人体に移動してフリーラジカルが抑制される云々)などは、説明を読んでも「本当かなぁ…?」という印象を受けましたが、これも含めて一応何らかの論文を元にしているようです(もっとも、この手の健康に関する研究は意見が割れているものが多いので、効果を主張する論文があるだけで信用できるわけではないですが)。

「夜はスマホを見ない」など、よく聞く内容も多いですが、改めてこういう形でまとめて読んでみると、実生活に採り入れるモチベーションのアップになります。少なくとも短期的には…。マグネシウムの経皮吸収は初めて知って、 入浴剤に導入する方法ならば簡単に試せそうなので、とりあえず試してみようかと思います。

人工知能と向き合う:『人工知能の核心』

羽生善治氏が人工知能を扱った NHKスペシャルのために行った取材を通じて考えたことをまとめた本。

人工知能の核心 (NHK出版新書)

人工知能の核心 (NHK出版新書)

非常にわかりやすい形で、現在の人工知能の技術的な課題や、これから社会が人工知能を受け入れるあたっての課題がコンパクトにまとめられていました。さすがは羽生善治氏 × NHKスペシャルといったところでしょうか。

もともとこの手の話に興味があって既にある程度の知識はあったので、目新しい事柄や驚くべき事実などは特にありませんでしたが、その点を考慮しても図抜けて読みやすかったです。

また、羽生善治氏の言葉からはなんというか、本当に普段から自分の頭で物事を考えているんだろうな、頭がいいとはこういうことなんだろうな、という印象が伝わってきて凄いなぁと思いました。

変化すらも変化する:『9プリンシプルズ』

MIT メディアラボの伊藤穰一氏とジェフ・ハウ氏の著。

加速度的に変化の速度が上がる、複雑で不確実な世界における 9 つの原則が語られていました。

権威より創発

インターネットによるコミュニケーションコストの低下によって、多くの分野をまたがった人同士の多様な協力が可能になり、少人数のトップダウン的な決定よりも、大人数のボトムアップ創発の力が増す。

プッシュよりプル

必要な人が必要な時に必要な情報を取得できるシステムの方が、誰かが情報を管理して適切と思われる人に送るシステムよりも優れている。

地図よりコンパス

周りや未来を地図をかけるほど正確に調べることは高コストないしは不可能。未知のできごとにいずれ当たる、という前提で指針を作り、地図を作り始める前に行動に移すべき。

安全よりリスク

安全などはなく、失敗するリスクを受け入れる必要がある。

従うより不服従

言われたことをやっただけでノーベル賞を獲れた人はいない。ルールに盲目的に服従するのではなく、ルールを疑問視しなければならない。

理論より実践

理論から実践への一方向的な流れではなく、具体的な社会上・生活上の問題に実際に取り組むことで生まれる実践から理論への流れも重要になる。

能力より多様性

一分野に優れた人を少人数集めるよりも、多様な人々を巻き込んだ方が問題解決の勝率が高い。

強さより回復力

絶対に突破されない防御壁は作れない。

モノよりシステム

モノ単体ではなく、そのモノが作用するコミュニティを含めてシステム全体への影響を考えなければならない。


原則1つにつき1つの章が割り当てられていますが、その中で繰り広げられる具体例が直接的にわかりやすくその章のタイトルと結びついているかというとそうではなく、全体を通して 9つの原則が導こうとしている、という印象です。

この章と例の結びつきの低さに、全体的な文章のわかりにくさ(若干不自然さを感じたので、翻訳文が微妙な気もします)も相まって、期待したほどの納得感・感銘は受けられませんでしたが、9つの原則自体は妥当性のあるものだと思います。