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本やゲームの感想など

ビッグデータ入門以前:『ビッグデータを支える技術』

Hadoop, Spark, MapReduce, Amazon Reshift など、キーワードとしては聞いたことがあるものの、それぞれがどういうもので、ビッグデータを処理するシステム全体としてどこに位置するかはよくわかっていない、それくらいの前提知識で読み始めましたが、ちょうど良い感じでした。

ビッグデータを支える技術―刻々とデータが脈打つ自動化の世界 (WEB+DB PRESS plus)

ビッグデータを支える技術―刻々とデータが脈打つ自動化の世界 (WEB+DB PRESS plus)

データの可視化を例に、データを集める箇所、リアルタイムに処理する箇所、定期的に処理する箇所などをデータがどのように流れ、各箇所ではどのような事に気をつけて設計されているかを学ぶことができました。

実際にこれから何かしようという訳ではなかったので、各種システム上の具体的なスクリプトスニペット的な短いもの)や、実際に環境を整えて手を動す箇所は今回は流し読みです。何かやってみたいとは思いつつ、特に分析したいことも今はありませんし、何か見つかったとしてもスモールデータを処理するフレームワークで事足りるだろうなぁ、と。

本当にビッグデータが必要なのか、実は少数サンプルからの具体例で多くの場合は十分な知見が得られるのではないか、と思うことがなくはないのですが、とりあえずデータを取っておいて後で何か見れるようにしておく、というのは後で仮説を検証するためという点でも有意義です。これからもどんどん技術発達が進み、データ収集・分析のコストが下がり続けて、いろいろなデータが気軽に収集、公開、活用できるようになるといいですね。

小説感想:『パーフェクトフレンド』

野崎まど著。『2』よりも先に読むべきだったという本の一冊。

秀才「理桜」と天才「さなか」、2人の小学生のやりとりを通して友達とは何か、について語られる友情物語(?)。

紹介文に「異色ミステリ」とありましたが、これをミステリと呼ぶのかどうか。結末は不思議系で、むしろファンタジーよりです。あまりスッキリとはしません。若干不穏さすら感じるのは、先に『2』を読んでしまっているからなのかどうか。まぁ、やはり発売順に読むべきだったのでしょう。

地の文のテンションの高さ、叙述的なネタに戸惑う部分はあるものも、全体的に読みやすい、というのは相変わらず。

小説感想:『エデン』

ロードレースに少しのミステリ要素を併せた『サクリファイス』シリーズ。

エデン(新潮文庫)

エデン(新潮文庫)

スティグマータ』からあまり時間をおかずに読んだこともあって、全体の流れも細かな描写もある程度パターン化している、ということを強めに感じて少し新鮮味がありませんでしたが、それでもそれなりに楽しめました(ちなみにこちらの方が『スティグマータ』よりも前)。

ミステリっぽい部分は一応ある程度の伏線は序盤から張っていますが、事件の勃発も解決もかなり後半に急に来るので、良く言えばレース部分の描写の邪魔にならないです。悪く(?)言えば、ミステリ部分がなくても、少なくともそれほど大きな事件がなくともいいスポーツ小説になるんじゃないか、という気がするので、一度スッキリと最後までレースを描いてみてほしいなと思います。

人類は神になる:『Homo Deus』

サピエンス全史で有名な著者による、未来の人類の展望。

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

Homo Deus: A Brief History of Tomorrow

戦争や飢餓といった問題を(基本的に)解決した人類がこの先目指すのは「不死(immortality)」、「至福(bliss)」、「力(divinity)」(divinity は本来「神々しさ」とかそういう意味ですが、この本の文脈では「神のような力」的な意味で、要するに自分の能力を含めて全てを自在に操る科学力的なものを指してます)である、として、それがなぜなのか、そのことが社会に及ぼす影響を思索している本。

本書を読んだのは 1ヶ月程前で細かいことはあまり覚えていないのですが、読みやすく、なかなか面白かったです。

  • 宗教を捨てて科学に傾倒した人類は、人類そのもものを(他の動物とは違って)価値のある存在だとするヒューマニズムという思想によって(宗教を捨てたことによって失われた)「人生の意味」を守ろうとしてきたが、技術のこれ以上の発達はそれを脅かす(人類以上の知性が作成される、人間の脳が高度なアルゴリズムに過ぎないことが露呈する、など)
  • 物理的なリソースの価値が知識に対して相対的に低下したことによって兵士や消費者としての価値を失った大衆が、AI の発達と仕事の専門家によって労働者としての価値も失っている
  • 情報量が爆発的に増加した結果、現代の政治・政治家は未来のビジョンを持てず、国を導くのではなく国を管理するので精一杯である

など、一般人からしてみれば明るくない見通しもありますが、そういうのも含めて未来がどうなるのかを想像するのは楽しいですね。自分が生きている間にはそこまでの劇的な変化はないだろう、と思って他人事のように気楽に考えていますけど。

一方で、あと 50年か 100年くらい遅く生まれていたら世界がどこまでいくのを見られたのだろう、と考えると、それはそれでちょっと悔しい気もします。まぁ、それは不死が実現するまで、どんな時代に生まれようとその気持ちは変わらないのでしょう。

小説感想:『じごくゆきっ』

桜庭一樹短編集。

依存、不安、無力感、失望、憎悪、そういう、どこにでもあるけどどこか歪んでいる、屈折した感情の書き方が上手いです(程度は強いにせよ)。

どの作品も、劇的というよりは淡々とした調子でありながら、何か引っかかるものがありました。

爽やかさとは無縁の作品ですが、こういうのも「いかにも小説」という感じがして好きですね。