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本やゲームの感想など

小説感想:『スティグマータ』

ロードレースとミステリーの要素をかけ備えた「サクリファイス」シリーズ5作目。 かつてドーピング違反によってロードレースを去った英雄の5年ぶりの復活の真意とは?という謎を添えてツール・ド・フランスのレースを描く。

スティグマータ

スティグマータ

相変わらず良いシリーズで、主人公らしくない主人公、白石誓の嫉妬や後悔を抱えながらも前向きな感じを始めとしてロードレーサー達の描写が上手いです。エースの影であることへの誇りと葛藤や、最盛期を過ぎてしまったという自覚など、スポーツものとして純粋に面白い。

英雄復活の真意については説得力が弱く、結末に「サクリファイス」ほどの衝撃はありませんでしたが、作品全体としては良かったです。

小説感想:『このたびはとんだことで』

桜庭一樹奇譚集。

「奇譚集」というだけあって、不思議系・雰囲気系のお話が多かったです。

それほど強く印象に残る作品はありませんでしたが、「青年のための推理クラブ」と「冬の牡丹」には共感できるモノがありました。

小説感想:『Paper Magician』

久々に Kindle オーナーライブラリーを活用して洋書を読みました。

The Paper Magician (The Paper Magician Series, Book 1)

The Paper Magician (The Paper Magician Series, Book 1)

Teen & Young Adult 向きで 200ページ強ということもあり、平日含めて3日で読了。

主人公が恩師を助けるために敵に立ち向かう、というシンプルなストーリーで、途中特に大きなひねりもありませんでした。

設定の説得力は少し弱い気がします。魔法使いは「契約」を交わすことで1種類の人工物に魔法を掛けることができるようになるものの、その対象は1つ限りで一生変えることができない、主人公は自分の希望に反して「紙」と契約することになる、紙なんて嫌だ…(世間的にも紙は人気がない模様)という導入なのですが、話が進むに連れて「紙魔道士万能過ぎでは?」と思えてきます。

他の魔法使いがほとんど出てこないため、もしかしたら相対的に見ると紙は弱く、地位が低いのかもしれませんが、であれば今回主人公が相対することになった敵の魔法使いへの対抗方法はいくらでもあるのでは、という方向に考えが進み、どっちにしても納得感には欠けそうです。

まぁ、魔法モノでこのあたりに必要以上に突っ込むのは野暮かもしれませんね。この世界における魔法のルールや役割もあまり詳しくは語られていませんし、良くも悪くも Teen & Young Adult 向けに複雑さが排除され、主人公の話に終始している、と言えるかもしれません。

小説感想:『2』

読んだ後で「同著者の過去作のキャラクターが総出演しているのでそれらを先に読むべき」という事実を知り、読んでいなかった自分は「えー」となっているところです(『know』は読んだことがありましたがそれは関係ありませんでした)。

なので、自分は本書を楽しみきれていない可能性はありますが、、、感想としては読みやすくて面白かったけれども…といったところです。

主人公が地の文で頻繁にツッコミを入れるノリだったり、主要登場人物の大半が超人か美人(もしくは超人かつ美人)という現実離れ感だったり、いい人に見える人々が結果的に噛ませ犬っぽかったりと、ちょくちょく自分の好みから外れていて引っかかる感じがしました。

オチも、何となく理解はできるような気がするものの納得がいくかというとそうでもない、という微妙なところです。

創作とは何か、創作の行き着く先は何なのか、という扱っているテーマ自体は興味深いものでしたし、テンポも良く500ページ長とは思えないほどスラッと読めたので全体としては好印象なのですが、それ故に気になる部分がいろいろと惜しく感じる、そんな一冊でした。

小説感想:『蝿の王』

ノーベル文学賞作家、ウィリアム・ゴールディングの代表作の新訳版。

蠅の王〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

蠅の王〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

飛行機事故によって無人島に閉じ込められた少年たちが、大人のいない島で生活を続けるうちに…、というお話。

全体的に周囲の景色・雰囲気の抽象的な描写が多くて少しテンポが悪く感じましたが、お話の骨子、段々と狂っていく少年たちの様子には迫力がありました。

人間が持つ悪性が生々しく描かれた作品だと思います。